構成：土橋一夫（編集部）
Text by 鷲尾 剛（静岡本店）／常盤安信／土橋一夫（編集部）
SUMIYA'S STANDARDとは…？
「歌は世に連れ、世は歌に連れ」ということばがあるが、音楽はいつの時代でも、人それぞれのBGMとして「思い出」の中から聴こえてくる。子供の頃は初めて家に届いたテレビの中で動く歌手の姿と重なり、青春時代にはメッセージが織り込まれたフォークだったりしたものだ。ある人にとっての初恋の歌が、ある人にとっては失恋の歌であったり、音楽は人それぞれの記憶の中で幾色にも変化していく。
そんな時間を切り取ってみたり、あるいは積み残された何かをあらためて探したり、その背景にふさわしいと思われる「名曲」「名盤」「定盤」を自由自在に切り取ったのが、このSUMIYA'S STANDARD。ここに掲載したのはほんの一部。ここに載せきれない様々な音楽たちがお店で待っています。
僕はこう思う、私はこう思う、とこれを読まれた皆さんが「音楽」への思いを甦らせて下されば嬉しいのですが…。そんな事を願って。
SUMIYA'S STANDARD Vol.5
■今回のテーマ：フォーク・ロックの名盤
今回はボブ・ディランのニュー・アルバム『トゥゲザー・スルー・ライフ』のリリースを記念して、今なお根強い人気を誇る彼の1960年代の作品と、その時期にムーヴメントとなったフォーク・ロックのDNAを受け継ぐ作品をご紹介します。1960年代前半から中盤にかけては、フォーク、ロック、そしてカントリーやジャズなど様々なタイプの音楽が融合し、またビートルズなどの登場もあってシーンが大きく変化し始めた時期でもありました。1つの音楽的要素には固執せず、良いと思ったサウンドを実現するためにそれぞれのアーティストが試行錯誤を続け、その結果今なお名盤と呼ばれる優れたアルバムがこの時期に多く生み出されました。色褪せない名盤の数々を、是非ご体験下さい。
（初出『Groovin'』2009年5月25日号）
ボブ・ディラン
『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』
SMJI
発売中
CD
MHCP-803
¥1,785（税込）
当時のガールフレンド、スーズ・ロトロと一緒に写っているあまりにも有名なジャケットの本作は、代表曲の1つである名曲「風に吹かれて」を収録したセカンド・アルバム（1963年作）であり、誰もが認める初期の傑作。ほぼ全編フォーク・ギターとハーモニカの弾き語りによって歌われている本作は、「風に吹かれて」をはじめ、「戦争の親玉」「第3次世界大戦を語るブルース」「くよくよするなよ」等のプロテスト・ソングを中心に構成された、21歳のディランが当時の若者たちの代弁者としてメッセージを投げ、若きフォーク・シンガーとして注目されたアルバム。イギリス民謡の「スカボロー・フェア」をリメイクして創ったとされる名曲「北国の少女」も収録。（常盤）
※SACD Hybrid（MHCP-10001／¥2,520 [税込]）も発売中。
ボブ・ディラン
『追憶のハイウェイ61』
SMJI
発売中
CD
MHCP-806
¥1,785（税込）
名曲であり代表曲の1つであるアル・クーパーのオルガンの音色が印象的な「ライク・ア・ローリング・ストーン」を収録した、6枚目のスタジオ・アルバム（1965年作）。ギター1本の弾き語りスタイルから脱却を図った前作『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』から、マイク・ブルームフィールド、アル・クーパーらがバック・メンバーとして参加しバンド・サウンドを前面に押し出し、よりロック色を色濃く打ち出したフォーク・ロックの金字塔であり不朽の名盤。「廃墟の街」でのディランのヴォーカルとマイク・ブルームフィールドのギターの11分以上におよぶ掛け合いに圧倒される。他にも「トゥームストーン・ブルース」「悲しみは果てしなく」「やせっぽちのバラッド」など収録。（常盤）
※Blu-spec CD（SICP-20024／¥2,500 [税込]／限定盤）やSACD Hybrid（MHCP-10004／¥2,520 [税込]）も発売中。
ザ・バンド
『ザ・バンド』
EMIミュージック・ジャパン
発売中
CD
TOCP-65577
¥2,548（税込）
バンド名を冠にした最高傑作の呼び声の高いセカンド・アルバム（1969年作）。ブルース、カントリー、ゴスペルなどのアメリカン・ルーツ・ミュージックが渾然一体となり、南北戦争から1960年代のアメリカまでという様々な物語が詰まったアルバム。代表曲「ラグ・ママ・ラグ」「アップ・オン・クリップ・クリーク」を収録。「ウィスパリング・パインズ」は隠れた名曲。（常盤）
※SHM-CD（TOCP-95015／¥2,600 [税込]／限定盤）や紙ジャケット仕様（TOCP-67392／¥2,600 [税込]／限定盤）も発売中。
ザ・バンド
『ラスト・ワルツ』
ワーナーミュージック
・ジャパン
発売中
CD（2枚組）
WPCR-11771〜2
¥3,570（税込）
1976年11月にサンフランシスコのウィンターランドで行われた、コンサート活動の終了を宣言する最後のステージの模様を収録したロック史に残るライヴ盤（1978年発表）。ボブ・ディラン、マディ・ウォーターズ、ニール・ヤング、ヴァン・モリソン、エリック・クラプトン、ドクター・ジョン等これまで関わってきたミュージシャンが豪華ゲストとして多数参加。
（常盤）
クロスビー、スティルス、ナッシュ＆ヤング
『デジャ・ヴ』
ワーナーミュージック・ジャパン
発売中
CD
WPCR-75050
¥2,000（税込）
米西海岸ロックの雄であるバーズ、伝説のバッファロー・スプリングフィールド、ビートルズを追撃する英ロック界のホリーズ…この3グループのメンバーが既成の音に飽き足らず組んだCSN&Yの名作。硬軟両面を併せ持つ幅広い音楽性もさることながら、ハーモニーの美しさにも感嘆。ジョニ・ミッチェル作品をカヴァーした「ウッドストック」は彼ら最大のヒットだ。（鷲尾）
※SHM-CD（WPCR-13243／¥2,300 [税込]／限定盤）も発売中。
サイモン＆ガーファンクル
『明日に架ける橋』
SMJI
発売中
CD
MHCP-2067
¥1,785（税込）
来日も楽しみなサイモン＆ガーファンクルが1970年にリリースした5thアルバム。ベトナム戦争の泥沼化や公民権運動の激化といった問題を抱えていたアメリカ社会の姿を反映した本作は、多くのリスナーの支持を得て全米チャート10週連続No.1の大ヒットとグラミー6部門受賞を記録。しかもそういう背景を考えずに今聴いても極めて完成度が高い。（土橋）
※Blu-spec CD（SICP-20023／¥2,500 [税込]／限定盤）も発売中。
ドノヴァン
『エッセンシャル・ドノヴァン』
SMJI
発売中
CD
MHCP-452
¥1,785（税込）
ボブ・ディランの流れを継承したフォーク・スタイルで1965年にシーンに登場したドノヴァン。その後、ロックやサイケデリックなど様々なスタイルを取りながら、その独特のサウンドと吟遊詩人的な世界観で根強い人気を誇るが、本作はそんなドノヴァンの作品を手軽に味わえる決定盤的ベスト。デジタル・リマスター音源を採用し、音質的にもお薦め。（土橋）
ジョニ・ミッチェル
『ブルー』
ワーナーミュージック・ジャパン
発売中
CD
WPCR-75230
¥1,800（税込）
女性シンガー・ソングライターの先駆けとして多くのミュージシャンにも影響を与えたジョニ・ミッチェルが、1971年にリリースした4thアルバム。全編に渡ってアコースティックなサウンドを基調としながら、その中で彼女独特の情感溢れる歌が渦巻く様はまさに圧巻。ジェイムス・テイラーも参加し、その独特の味わいあるギターを披露する名盤だ。（土橋）
※SHM-CD（WPCR-13244／¥2,300 [税込]／限定盤）も発売中。
岡林信康
『わたしを断罪せよ』
EMIミュージック・ジャパン
発売中
CD
TOCT-6871
¥2,548（税込）
フォークの神様と称され、絶大な人気を誇った岡林信康が1969年にURCからリリースした記念すべき1stアルバム。コンサートでも欠かせない「友よ」をはじめ、「今日をこえて」「山谷ブルース」「手紙」「それで自由になったのかい」といった代表曲が並ぶ。木田高介、つのだ・ひろ、中川イサトら当時のシーンを牽引した豪華メンバーが参加。（土橋）
※紙ジャケット仕様（FJ-1001／¥2,800 [税込]／限定盤）も発売中。
吉田拓郎
『人間なんて』
フォーライフ ミュージックエンタテイメント
発売中
CD
FLCF-4102
¥2,300（税込）
1971年11月発表。伝説となった同年の中津川フォークジャンボリーでも披露された「人間なんて」を中心とした本作は、間違いなく初期の拓郎を語る上で外せない名盤（2nd）。日本フォーク史に残る名曲「結婚しようよ」が含まれる一方、「自殺の詩」「どうしてこんなに悲しいんだろう」といった当時の青春群像の一面を窺わせるナンバーも収録。（土橋）
