水谷 豊 of Groovin2009

ARTIST PICK UP

水谷 豊

想い出のタイムカプセルが呼び覚ました、歌い手としての本能。
水谷 豊、過去から現在への時間旅行から繋がる明日への夢。
2ndアルバム『TIME TRAVELER(タイムトラベラー)』リリース!

(初出『Groovin'』2009年6月25日号)

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 昨年、約22年ぶりに音楽活動を再開した水谷 豊。「相棒」ブームの追い風を受けてヒットした前作『TIME CAPSULE』に続くニュー・アルバム。
 1970年代から80年代にかけ、多くのヒット曲を生み出した錚々たる作家陣を起用した往年の楽曲のセルフ・カヴァー、洋楽カヴァーに加え、シングルとして発表された最新曲2曲を加えた全11曲。原曲のよさはそのままに、キャリア相応の装飾と着こなしが施されたアレンジはもちろん、その歌唱も以前と変わりなくどこまでも水谷流だ。たとえば本人の強い思い入れがあるという「MY WAY」のようなドラマティックな曲でさえ「ヴェテラン歌手っぽい」ケレン味などまったく感じられない。クールな艶男を演じても、朴訥な教師を演じても、背中で語るような人生訓を歌っても、どこか生真面目であれこそすれ、こちらが感情移入できる隙間を与えてくれる。それがシンガー・水谷 豊の持ち味というものだろう。
 10年ぶりの書き下ろしとなった新曲「大丈夫だよ」は、そのタイトルから同世代に向けた応援歌もしくは枯れたラヴ・ソングあたりを想像したものの、見事玉砕。詞に滲む歳相応のリアリティこそ切ないものだが、ヨーロピアン風味をまぶしたハイパーな曲調と恐らく意識してそうしたであろう溌溂とした歌声が、彼の歌い手としての今を如実に表している。今の時代の音楽シーンの中で、新しささえ感じとれる。一方、26年ぶりの自作曲「シルエット」は多くのファンが求める水谷 豊の歌から大きく逸脱するものではない。それが結果的に、リアルであることに頓着していなかった時代の"フィクションの妙味"を改めて浮き彫りにした格好となった。
 だからこそ次作は純然たるオリジナル作を。回顧、励まし、癒しでもなく、ましてや桜や感謝ではない、年齢性別世代不問のファンタジー、そしてロマン。もはや夢でもいいから夢がみたい。そんな現代人に向けた歌を、何度目かの旬を迎えた演技者、水谷 豊にこそ切望してやまないのである。

Text by 篠原美江

『TIME TRAVELER』
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avex io
発売中
[CD+DVD]IOCD-20288/B ¥3,990(税込)
[CD]IOCD-20289 ¥3,150(税込)
レコード大賞企画賞受賞の前作『TIME CAPSULE』に続くリメイク・アルバム第2弾。最新シングル2曲のクリップとメイキング、作詞家・松本 隆とのスペシャル対談を収めたファン垂涎のCD+DVD仕様と、CDのみ仕様の2形態で発売中。

【水谷 豊 エイベックス・オフィシャルサイト】http://www.avexnet.or.jp/mizutani/

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