村下孝蔵 of Groovin2009

ARTIST PICK UP

村下孝蔵

アコースティック・ギターの音色が色鮮やかに、
そして、情感たっぷりに村下孝蔵の歌を演出するライヴ・サウンド。
どこかに忘れてきた、あの想いがふっとよみがえり、とても切なくなる。

(初出『Groovin'』2009年6月25日号)

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 村下孝蔵さん、今も大好きな歌を何処かで歌ってらっしゃるのでしょうか?
 そう、村下さんはもう、この世にはいない。ちょうど10年前の6月24日、46歳という若さでこの世を去ってしまった。その当時の事は、それほど思い出せないけど、彼の歌に初めて会った時のことは、なんとなく思い出される。
 最初に聴いた村下さんの歌は「ゆうこ」という楽曲。この曲は、彼の4作目のシングルで、次に発売した「初恋」が大ヒットした事に陰ながら貢献した曲だと勝手に思っている。地元のFMラジオから、この曲が流れてきた時、「随分と情が入った大人っぽい歌だな」と他の歌との違和感を感じたものだった。夕暮れ時に聴いたのも、そんな感覚を助長したのかもしれない。今、聴き返すと、歌詞の一言一言、聴き漏らす事ができず、ゆえに胸を締めつけ、聴き終わった後には、とても苦しい想いに収拾がつかなくなる。「初恋」はもっと現実感を帯びていて、全身が真っ赤になりそうだが…。
 それで、今回発売になる『GUITAR KOZO』だが、全14曲が収録されている。全編が初商品化、貴重なアコースティック・ライヴの音源のみの構成。ライヴゆえ、ベスト・セレクションと言えるアルバムだ。ファンには、嬉しい2曲「手のひらの愛」(1997年XmasイヴェントでのプレゼントCD)と、「また逢う時まで」(デモ・テープに残されていた作品で、インストでの新録音)がボーナス・トラックとして収録されている。どの曲もアコギの音は、透明感を保っていて、まったく古さを感じさせない。また、ギターをかき鳴らす、そんな情景が即座に想起され、熱っぽさも十分に伝わってくる。ハイ・レヴェルのギター・テクニックも聴きごたえあり。それと、なによりもひたむきな村下孝蔵の声がここに存在していることがとても嬉しく感じられるはずだ。
 絶対にとは言わないが、機会があれば、聴いて欲しい。きちんと"音楽"に向き合える作品に間違いないから…。

Text by 松本昭仁

『GUITAR KOZO』
村下孝蔵-J.jpg

SMDR
7月1日発売
CD
MHCL-1541
¥2,520(税込)
歌とギター、生の村下孝蔵の姿がここにある。全14曲、アコースティック・ライヴ音源で、うち2曲はボーナス・トラック。ブックレットには、オリジナルのギター・コードを全曲掲載、さらに「踊り子」の完全コピー版譜面も別刷封入される。ファンのみならず、必携盤!

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