村田和人 of Groovin2009

ARTIST PICK UP

村田和人

僕らの心の中にずっとある、永遠の夏の記憶。
夏と言えば…村田和人!
かつての名作と肩を並べる会心作が遂に誕生。

(初出『Groovin'』2009年7月25日号)

20090810151631d53.jpg 毎年この季節になると聴きたくなる曲がある。例えば山下達郎の「夏の陽」や「LOVELAND, ISLAND」、大滝詠一の「ペパーミント・ブルー」、杉真理の「素敵なサマー・デイズ」…。そしてそんな曲をプレイヤーに載せるとき、決まって一緒に聴くのが村田和人のナンバーだった。
 村田和人といえば、一般的にはヒットしたシングル「一本の音楽」や、アルバム『また明日』『ひとかけらの夏』『Boy's Life』などに代表される、色鮮やかでポップなロックのイメージで捉えられている方も多いかと思う。特にデビューした1980年代前半には山下達郎のプロデュース作や、彼のツアーにコーラスとして参加したこともあって、当時をタイムリーに体験できた世代には山下達郎を通して彼の音楽にはまった、という方も多かったことだろう。実際にアメリカ西海岸を彷彿とさせる乾いたサウンドや、達郎作品とも共通する美しい多重録音によるコーラス、飛び抜けた歌唱力は彼の音楽の最大の特徴であり、このテイストを今なお待ち望んでいる音楽ファンも多かったはずだ。
 村田和人は昨年までにアルバム12枚を発表している。1995年に11thアルバム『sweet vibration』をリリースしたのを最後にソロ名義の作品リリースは途絶えていたが(この頃からコラボ活動が増え、例えば1998年には吉川みき・山本圭右・小板橋博司と"Jean & Gingers"としての『The Greatest Hits』や、1999年には"A, M, S & I"(安部恭弘(当時は泰宏名義)、村田和人、鈴木雄大、伊豆田洋之)として『奇跡はここにあるのさ』を発表、また杉真理、伊豆田洋之、山本英美と共にライヴ・イヴェント「ピュアミュージック」を定期的に実施するなどの活動が続く)、ここ数年は特にライヴ活動が活発となり、その中で昨年は12枚目となるソロ・アルバム『NOW RECORDING+』を発表し、久し振りにレコーディング活動へも復帰。そしてそれに続く13枚目のアルバムとして完成したのがが本作『ずーーっと、夏。』だ。
 実は前作を制作した際に、本人の中では既に本作を含む3部作構想が出来上がっていた。前作に収められた作品はデビュー前に書き溜められていながら今まで発表の機会がなかったものがほとんどで、本人によれば「村田和人としてのソロ活動をもう一度本格的に行いたい、という希望がここ数年で強くなり、そのためにはまず何らかの形で作品をまとめ発表したい、ということで作業をスタートさせた」という。つまりアマチュア時代の未発表作を今の自分の手で甦らせたものであったのに対して、3部作の2作目となる今作は書き下ろしの新曲で「村田の夏」をもう一度今の感覚で表現したものを、そしてその次には村田のロックを前面に出した作品を、という構想だった。そしてそれに則って今春からデモ・テープ作りがスタート。最初のデモの段階では、実は44曲という多くのナンバーが候補曲として挙げられており、その中から「村田の夏」をキー・ワードに11曲をセレクトし、レコーディングしたのが本作だ。
 また本作では、かつての「村田の夏」を象徴するナンバーを手がけた作詞家、安藤芳彦と田口俊が参加している点も見逃せない。気心が知れた彼らが描き出す世界観は、村田独特のメロディと一体となって結実した。ポップなサウンドと詞が絶妙の相性を誇る「JUMP INTO THE SUMMER」に始まり、ビートルズは不良の音楽と教えられたかつての少年時代と今を対比させた「ビートルズを聴いてはいけません」、美しいバラードの「二人乗り」「海辺の町で」、風が立つような村田コーラスの面目躍如である「TOGETHER '09」「少年サイダー」、村田のロック・サイドを堪能できる「Used Wagon」、マイナー進行の美メロが耳に残る「True Blue」、ポップな「キッチンから I LOVE YOU」、ワクワクする詞の展開も見事な「颱風少年」、そして緩やかな潮騒を思わせるようなラストの「Dreaming by the Seaside」まで、まさに絵本をめくるように変化する様々な夏のシーンが同居する本作は、大人の鑑賞に耐えうる優れたサウンドと美しい詞の世界が融合した新たなる名盤だ。
 今夏の思い出と共に、『ずーーっと、夏。』はあなたの心の中の「永遠の夏」を素敵に彩る1枚になるはずだ。

Text by 土橋一夫(編集部)

『ずーーっと、夏。』
20090810151637559.jpg
NAYUTAWAVE RECORDS
発売中
CD
UPCH-20161
¥3,000(税込)
遂に村田の夏が帰ってきた!かつての名盤と肩を並べる、超充実のサマー・アルバムが誕生。ダイナミックなヴォーカル、美しいコーラス、安藤芳彦と田口俊が描き出す詞の世界が高度に融合した、完成度の高い11編のサマー・ソングス。2009年の夏には欠かせない重要作だ!

【村田和人 WEB SITE「I am Kaz!」】http://www010.upp.so-net.ne.jp/i-am-kaz/

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