WINDBLOW'09〜編集部おすすめ!参加アーティスト最新作 of Groovin2009

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Text by 秦 理絵(編集部)

8月29日、30日、今年も静岡県相良シーサイドパークにて開催されたWINDBLOW。
その会場で素晴らしいパフォーマンスを披露してくれたミュージシャンたちが、
この秋、続々と新作をリリースする。まさに三者三様、確固たるオリジナル作が完成!

(初出『Groovin'』2009年10月25日号)

東田トモヒロ ギター片手に日本中を放浪し続ける吟遊詩人、その木訥とした歌声。

東田トモヒロ-A4C.jpg 新たな時代に過去の何かに立ち返る、回帰するということは、むしろ進化することと同意義だと思うことがある。東田トモヒロは、今年の活動のテーマに"原点回帰"を掲げてきた。最新アルバム『Stay Gold』のレコーディングは山奥のログハウスに機材を持ち込んで、8トラックのテープで行われたという。
 本作のシンプルなギター・ロックを聴いていると、まるでハンモックに寝そべっているようなリラックスした気分に支配され、ふと体を揺らしている自分に気づいた。誰かの幸せをそっと祈り、自分の些細な生き方を少し誇りに思う、そんな素朴な歌詞も良い。繰りかえしの言葉選びが楽曲にリズムを与える「Lost Generation」や、ギター1本の弾き語り曲「Sweet 10 years」の力強い声に匠の技を感じつつ、最も歌の魅力を感じたのは女言葉の哀愁歌「Melody」。狂おしいほど美しいメロディに感動して、これが原点回帰の果てに着地した最新の東田トモヒロの姿だと確信した。

『Stay Gold』
東田トモヒロ-J.jpg
Gumbo Groove/
バウンディ
11月11日発売
CD
XQIC-1001
¥2,520(税込)

70年代サウンドを彷彿とさせるシンプルな音づくりは、山奥のロッジに籠もってのこだわりの手法によって完成させた。熊本在住のシンガー・ソングライター、東田トモヒロ、1年5ヶ月ぶりのオリジナル・アルバム。本当に良い歌だけが収められている。

GAKU-MC ほんの少しの想像力が未来を照らし出す。今日が、明日へのスタートライン!

GAKU-MC-A4C.jpg 実に7年ぶりにリリースされた新作は、GAKU-MCという男を構成するあらゆる要素が丸裸になると言っても過言ではない。ヒップ・ホップ馬鹿で、フットボールと波乗りが大好きで、父親で、ちょいわるオヤジで…そんな人となりが表れた言葉も面白いが、注目すべきは独特の音作りだろう。
 サンプリングとループによらず、バンドによる生音にラップをのせるというソロ・ワークスの結晶。唸るギター、ピアノ・ロック、ホーン・セッション、シーサイド・トラックやレゲエ、そういうバンド的なアプローチがまず耳を奪う。と同時に、おそらくあえて選んでいるであろうポジティヴで説得力のあるリリック。寓話風に仕立てながら、自殺抑止のメッセージを含んだ「屋上へと続くドア」をオープニング・トラックに据えた意味は大きい。アルバム・タイトルは、収録曲「世界が今夜終わるなら」のフレーズからだが、そこでも描かれている"「もしも」の末に浮き彫りになる、今、自分がすべきこと"という思考回路、GAKU-MCの人並みはずれた未来への想像力に脱帽した。

『世界が明日も続くなら』
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トイズファクトリー
発売中
CD
TFCC-86314
¥2,800(税込)

日本ヒップ・ホップ・シーンのパイオニア、GAKU-MC、7年4ヶ月ぶりの新作アルバムをリリース!ゲスト・ミュージシャンに小倉博和、河口修二らを迎えた直球J-POPサウンドに、人柄の表れたリリックが心に響く。GAKU-MC×桜井和寿名義の「手を出すな!」も収録。

Likkle Mai 私たちはどこへ進むべきなのか…?Likkle Maiが導く真実への旅。

Likkle Mai-A.jpg ここ数年、どうしてもレゲエ=夏なイメージが先行しがち。もちろん四季折々の日本、それだって素晴らしいことなのだけど、Likkle Maiのレゲエは季節になんて囚われない。とても地に足が着いている。ルーツ・レゲエを拠り所に、それを深く理解し、体現していく姿勢が最新アルバム『mairation』には貫かれているのだ。
 アルバムは1曲目「Come Together For I&I」を皮切りにルーツ・トラックが続く。ルーツ・レゲエ独特の抑揚のある唱法で力強く刻むリリックが印象的な前半、アルバム中盤にかけては軽やかなロックステディ、ララバイ、ラヴァース・ロックなどで穏やかな気分に、そして重量感のある終盤へと展開していく。非常に振り幅が広い。なかでもダブ・サウンドの混沌とした空気感と放つメッセージがマッチした「意地悪WORLD」は圧巻。すぐに答えを求めがちな彷徨い人である私たちが、取り戻さなくてはいけないもの、それは案外シンプルなものなのかもしれない。

『mairation』
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MK STARLINER
11月4日発売
CD
MKD-002
¥2,800(税込

DRY&HEAVYを脱退後、3枚目となるオリジナル・アルバム。ルーツ・レゲエに根ざした確固たる音楽性と現代社会へのメッセージ、愛に満ちた13曲を収録。自身が絶対の信頼を置くバンド(Litttle TempoやJungle Rootsのメンバー)と共に丁寧に制作された。

会場写真-メイン.jpg      相良での思い出から2ヶ月近く経ったというのに、今回掲載している3人のアルバムを聴いていたら、またいろいろと思い出が蘇ってきた。Likkle Maiの「共にゆこう」、東田トモヒロの「男の条件」、そして、GAKU-MCの「take it slow」などが、新作アルバムから披露されたナンバーだ。不思議なもので、あの日聴いたきりだったというのに、アルバムを聴けば、あれ?この曲は…と反応できるもの。感動の再会、というやつだ。もし今年のWINDBLOWで3人から何かを受け取って帰った人がいたとしたら、ぜひ、新作アルバムも聴き込んでほしいと思う。

★コンピレーション・アルバム好評発売中!
V.A.『WINDBLOW』
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FILE RECORDS
発売中
CD
XQWB-1
¥2,500(税込)

お馴染みのメンバーが集結して、それぞれがWINDBLOWへの想いを音に込めた初のコンピレーション・アルバム!今年の会場で披露されたLikkle Maiの「あの場所で逢おう」、東田トモヒロの「Dancin' in the WINDBLOW」をはじめ、本作でしか聴けないつちのこEXPLOSIONもばっちり収録。

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