THEE MICHELLE GUN ELEPHANT of Groovin2009

1996年にデビュー、そして2003年10月に解散。
圧倒的な存在感を放ちながら駆け抜けていったバンドの奇跡と軌跡。

（初出『Groovin'』2009年12月25日号）

　1996年にシングル「世界の終わり」でメジャー・デビューをして以来、絶大な支持を得てきたTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT（以下、ミッシェル）。同時期に活動していたBLANKEY JET CITYの魅力を"不良性と少年性の同居"と称するならば、ミッシェルの魅力は"青春性"にあったと思う。危うさと甘酸っぱさ。彼らの音楽や佇まいには、常に青春期特有の匂いのようなものがあった。チバという天性のヴォーカリストが放つ唯一無二の声、ブンブン唸るウエノのベース、音圧が半端じゃないクハラのドラム、そして鬼神のような破壊力と切れ味で刻み続けるアベのギター。これらが渾然一体となって生み出されるミッシェルのロックン・ロールは、疾走感と焦燥感を抱えながらここではない何処かに向かって駆け抜けていこうとしていたように思える。そんなミッシェルの青春という名の旅は、2003年10月のラスト・ライヴで終焉を迎えた。メンバーはそれぞれに新たなバンドを結成し、各々の青春以後を生き抜いていこうとしている。しかし、2009年の7月、アベフトシが急逝した。彼の死で、ミッシェルの再結成はもはや永遠に叶わぬものとなってしまった。ミッシェルの青春性の象徴とも言える性急なカッティングを抱えたまま、アベは本当に突然に逝ってしまった。
　アベフトシの追悼プロジェクト「FOREVER MICHELLE! -Final works of rockin' blues.-」が始動した。アベの43歳の誕生日になるはずだった12月16日にリリースされたベスト・アルバム『THEE GREATEST HITS』と、幕張メッセでのラスト・ライヴが行われた2003年10月11日という一日を綴る映画『THEE MOVIE』。幕張でのライヴ映像を再編集し各地で上映されている『THEE SCENE』。そして2010年1月20日にリリースされるライヴ映像集『THEE DVD BOX』。
　ベスト・アルバム『THEE GREATEST HITS』は2枚組32曲収録のコンプリート・ベストで、更に初回限定盤にはテレビ出演時のパフォーマンス映像（しかも未公開映像もある！）を16トラック分収録したDVDと、100ページにわたる写真集が封入されている。ミッシェルのファンなら迷わず初回限定盤を手に入れてほしい。
　これら4つの作品で、もう二度と叶うことのないはずだった"再結成"が実現する。しかし、アベの不在はどうしたって埋まらないし、ボクらはチバの横にポッカリと空いた現実を受け入れるしかないんだ。ライヴ中に猛烈なスピードでリズムを刻みながらオーディエンスを見つめるアベの眼差し。鬼神と称される男の柔和で温かな眼差しを、ボクらはライヴ映像で確認する。最後にあらためて、アベフトシのご冥福をお祈りする。

Text by 鈴木 篤