ボス&ザ・ウェイラーズ of Groovin2010

ARTIST PICK UP

ボス&ザ・ウェイラーズ

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静岡発、現在進行形のBLUESがここに在る。
まさにファーストにしてベストな1枚だ。

(初出『Groovin'』2010年1月25日号)

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 先だって休みを取る機会に恵まれて北陸に出かけたのだが、人口50万を超える地方都市の中心繁華街にCD屋が1軒もないことに気づき愕然とした。旅に出ての楽しみのひとつに「知らない街の知らないCD屋めぐり」がある自分としては、何とも切ない気分となった訳だが、その夜、たまたま飲みに出かけた先にライヴ・ハウスがあり、沢山のお客さん、そしてそこかしこに貼られている有名・無名織り混ぜた「ライヴ告知」を見て、音楽需要自体が衰退しているわけではない、とも思ったしだい。
 さて、前置きが長くなったが、今、僕が暮らしている静岡の街にも数軒のライヴ・ハウスがある。そして、そこには地元のバンド(ミュージシャン)が数多く出演しているのだが、今回ご紹介するボス&ザ・ウェイラーズは、その中でも群をぬいて「雰囲気」のあるバンドだ。自分自身が楽器をやる方ならば、たとえばギターやドラムの巧拙に言及するところから、そのディテールを語り始めるのかもしれないが、僕の場合、小学校の縦笛以来、ろくろく楽器に触れてこず、その分、人の100倍くらいレコードやCDに耽溺してきたこともあり、まずは「第一印象&雰囲気」重視なのだ。そして、そのポイントは音に触れ、自身の気分が高揚するか否かにかかっている、という単純なモノ。その点、このバンドは、まずは何とも誠実そうで、まっとうな社会人風のたたずまいが嬉しいし、やっているのがブルース(憂うつな音?)なのに、決して、ダークな気分にはさせず、むしろ「晴れの場」へ連れて行ってくれるのだからなお嬉しい。もちろんブルースなスピリットが漲った演奏だけに、ライヴ会場だけではなくCDでそれを聴けたらと常々思っていたのだが、それが、こうして現実となったのだから、まさに素敵じゃないか!
 さて肝心な内容だが、限られた字数、収録曲のあれやこれやは書かないが、ブルースの定番はもちろんビートルズやストーンズの(彼らによる)21世紀型解釈も聴けるなど、まさに、ファーストにしてベストな、タイトルに偽りなしの74分となっている。冒頭のファンキーなベース、タイトなドラムス、チャカポコ(!)ギターが聴こえてくるマディ・ウォーターズのカヴァー「I Just Wanna Make Love To You」やビートルズ作品「Drive My Car」は特におすすめ。また「Up The Line」」の一見ラフだが、何ともスピード感のある演奏は、永井ホトケ隆氏の前座を務めた際の録音で、ライヴ・バンドとしての彼らのチャーミングな一瞬を捉えていて、これもお気に入り。そうそう1967年の横浜本牧の音みたいなんだよなぁ…これが。つまり、まさにヒップな1枚なのだ。
 そして手に取って頂ければ一目瞭然だが、秀逸なジャケットや(開けてビックリの)洒落たレーベル・デザインなど、細部への気配りも半端じゃない。こうしたCDに出会うと、配信とは別の次元にある音楽パッケージ本来の楽しさも大いに感じるし、こうした音を人から人へ届けるCD屋ならば街中で必要とされるはず、などと思いは多岐に渡って膨らむ。いずれにせよ、ボス&ザ・ウェイラーズ、寒い冬をぶっ飛ばすに最適な音。買いです、これは。

Text by 鷲尾 剛

『ベスト・オブ・ボス&ザ・ウェイラーズ』
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BOSS
発売中
CD
BWCS-1001
¥2,000(税込)

静岡ベースのブルース・バンドのデビュー作にしてベストな1枚。ブルースの定番はもちろんビートルズやストーンズの(彼らによる)21世紀型解釈も聴けるなど、タイトルに偽りなしの74分となっている。群をぬいて「雰囲気」のある音をぜひ楽しんで頂きたい。

【ボス&ザ・ウェイラーズ公式HP】http://bossw.web.fc2.com/

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