クリスティーナ・トレイン of Groovin2010

ARTIST PICK UP

クリスティーナ・トレイン

ノラ・ジョーンズ、プリシラ・アーンに続く、ブルーノートの一押しアーティスト、
クリスティーナ・トレイン、ついに日本デビューです。

(初出『Groovin'』2010年2月25日号)

クリスティーナ・トレイン-A.jpg ノラ・ジョーンズ、プリシラ・アーンに続き、今年ブルーノート・レコードが推す女性シンガー・ソングライターがクリスティーナ・トレインです。27歳、日本デビューとなるアルバム『クリスティーナ・トレイン』、原題は『Spilt milk』…思わずジェリー・フィッシュの名盤を思い出してしまいますが、これは〈(It is no use crying over) Spilt Milk〉(こぼれたミルクを嘆いても仕方ない=覆水盆に返らず)の意味どおり、〈失敗しても嘆かないで、次がある〉と励ましてくれるようなアルバムをイメージしてのことだそうです。アメリカ、ニューヨーク生まれですが、10代の頃はジョージア州サバンナで過ごしていました。南部のソウルやゴスペルに囲まれた環境が彼女の音楽に深い影響を与えているようです。ジョニ・ミッチェル、ジミ・ヘンドリックス、レッド・ツェッペリンのようなロック、またクラシックやオペラ、ジャズやブルースも聴いてきたようです。すでに幼い頃から成熟した歌い方ができて、19歳になると地元ではプロとして活動していたというその才能は確かなもので、プロデュースをしたジミー・ホガースは「本物のクラシックとなる声を持っている。歌に込められた感情を忠実に表現しながら、いともたやすく歌う」と評しています。時に繊細、時にパワフル、都会的でもありソウルフルでもある、変幻自在な声は、本人が「ジャニスのように枯れさせた」と言うように、先輩格のノラ・ジョーンズなどとは全く異なり、いい具合にハスキーでありブルージーなテイストを出しています。
 そのアルバムですが、M-1「こぼれたミルク」、M-2「ノー・マンズ・ランド」とパワフルに歌いあげる曲が続き、M-3「ドント・リメンバー」は、かつての『007』シリーズの主題歌(どれっていうのではなく)を思わせるようなドラマティカルなナンバー、そしてM-4「ドント・ベグ・フォー・ラヴ」 、M-5「イッツ・オーバー・ナウ」のいわゆる"枯れた"哀愁漂うナンバーへと展開していきます。その後も、ジャニスを含めロック・ポップスの引き出しを感じさせるM-6「ユー・アー・スティル・ゴーイング・トゥ・ルーズ」、M-7「「ムーン・リバー」のような」、ゴスペル・テイストのM-8「アイ・キャント・バット・ヘルプ」など、彼女の生い立ちを感じさせる曲が詰まっており、M-9「コール・イン・ザ・メイカー」からようやく彼女がブルーノートのアーティストだと思い出させる曲へと移っていきます。全体的にはストリングスが彼女のヴォーカルと実にうまく呼応しており、トータルとしての一貫性を打ち出しています。デビュー・アルバムとは思えない完成度の高さであり、名盤の誕生を予感させる1枚です。

Text by 松本真一

『クリスティーナ・トレイン』
クリスティーナ・トレイン-J.jpg



EMIミュージック・ジャパン
発売中
CD
TOCP-70829
¥2,200(税込)
※SPECIAL PRICE

ジミー・ホガースがプロデュースを手がけ、エグ・ホワイトらとも共作したデビュー・アルバム。 心の奥から歌い上げる豊潤でソウルフルな歌声、心に寄り添ってくる詞の世界は、名盤の誕生を予感させます。日本盤はボーナス・トラック1曲を含む全12曲。

【クリスティーナ・トレイン メーカーサイト】http://www.emimusic.jp/artist/kristinatrain/

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