ポルノグラフィティ

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ポルノグラフィティ

8枚目のアルバムは新たなチャレンジと実験的な発想に満ちた、攻めのポルノ!
この"きっかけ"が久々の全国ホール・ツアー「∠TARGET」へと続く。

(初出『Groovin'』2010年3月25日号)

ポルノグラフィティ-A.jpg デビューしてちょうど5年が経った2004年当時、ポルノグラフィティは2人になってリスタートをした。ゼロから新しい一歩を踏み出す決断をしたあの時から、さらに5年。初めて〈6年目〉というフィールドに立った彼らは、かつてないほど凛々しく精悍な表情を見せている。東京ドームでの単独公演を成功させたのが、昨年11月。10周年のベスト・アルバムを引っさげたツアー後ということもあり、新曲こそ少ないライヴでありながら、とても挑戦的な内容であったことを覚えている。ロックであるとか、ポップだとか、どちらかに括る必要などなく、自らの鳴らす音にプライドをもって〈ポルノグラフィティ〉であると言えればそれで良い、10年という歳月がもたらした誇りと自信に満ちたステージだったと思う。それはまた最新アルバム『∠TRIGGER』を聴いてみても、同じような印象として残った。
 ポルノグラフィティのアルバムを語る時、いつもついて回るのが〈ヴァラエティ豊かな〉ということ。それは今作も多分に洩れない。例えばアルバム前半、ポルノのサウンドとしては初めて聴くようなエフェクトを多様した踊れるエレクトロ・ロック「ネガポジ」があり、リズム・パターンを変化させながら進行するフォーキーな「クリシェ」がある。後半になると、スモーキーかつ軽やかなポップ・ソング「曖昧なひとたち」の後にギターが唸るヘヴィ・ロック調の「光の矢」がある。楽曲の流れや聴き入るリスナーの陶酔感を断絶するような大胆なアルバムの構成。多彩であることをポルノグラフィティ的とするならば、無理矢理にシンプルにまとめ上げる必要などない、そういう揺るぎない境地にいまバンドはいるのかもしれない。
 それから、今作では8枚目のアルバムにして初めて全曲の作詞・作曲をメンバーが手がけたことも触れておきたい。デビュー当時は叶うことのなかったそれは満を持して実現したひとつの挑戦だと思う。岡野昭仁(Vo)が手がけた訥々と語りかけるような哀愁感のある「ロスト」、新藤晴一(G)が手がけた歌謡曲ロック的な感覚の「IN THE DARK」などそれぞれが単独で作詞・作曲を手がけたナンバーの他、互いに詞・曲を分担したパターンが数曲ずつある。なかでも先行シングル「今宵、月が見えずとも」などでも見られた昭仁:作曲、晴一:作詞のナンバーが秀逸。その組み合わせで制作された曲のなかから、1曲目「∠RECEIVER」で彼らはこんなふうに綴った。〈この星の裏側でも僕たちの足下でも 起こりうる出来事から逃げない受信者(∠RECEIVER)でいたい〉。思い返してみると、ポルノが楽曲の中でメッセージの〈発信者〉であったことはとても少なかったと思う。むしろ時代のにおいを敏感に感じながら、他人や自分の内と外にある憂いや情熱を見つめ続けているバンドだと思うのだ。メンバーの感じる心と趣向を凝らした歌詞が、聴く人の心を自然と震わせてゆく。カッコいい音楽とはいつも、そういう健全な循環作用をもっている。
 従来の方法論にあぐらをかくことなく、初めてのことにも果敢に挑んだ最新アルバム『∠TRIGGER』。メジャー10年の活動の果てに生まれた作品であると知りながら、そこからは、うぶで恐れるものなど何もない新人バンドのアルバムのような熱い想いを感じた。

Text by 秦 理絵(編集部)

『∠TRIGGER』
ポルノグラフィティ-J.jpg




SME Records
発売中
CD
[初回生産限定盤]DVD付 SECL-857〜8 ¥3,600(税込)
[通常盤]SECL-859 ¥3,059(税込)

約2年半ぶりとなる8thアルバム。「今宵、月が見えずとも」「アニマロッサ」「この胸を、愛を射よ」と「瞳の奥をのぞかせて」の4曲のシングルを収録。初回生産限定盤には東京ドーム公演から1曲「うたかた」の他、Video Clip、メイキング映像を収録したDVD付き、三方背スリーブケース仕様。

【ポルノグラフィティ オフィシャルサイト】http://www.pornograffitti.jp

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