チャットモンチー

ARTIST PICK UP

チャットモンチー

儚くてキュート、ポップでタフ、しなやかで強靭な3ピース、チャットモンチー。
初のカップリング集で浮き彫りになる様々な表情。

(初出『Groovin'』2010年3月25日号)

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 この号が出る頃には、念願だったというアメリカ・ツアー(「サウス・バイ・サウス・ウエスト(SXSW)」"Japan Nite")ほかを無事成功させているであろうチャットモンチー。メジャー・デビューから数えて5年目、バンドとしての成熟度をグッと高めたオリジナル・アルバム『告白』から1年ぶりとなる2枚組の企画作品。カップリング・コレクションと既発曲5曲のアコースティック・アレンジによるセルフ・カヴァー集といった構成だ。
 2006年のデビュー・シングル「恋の煙」から2009年の「Last Love Letter」までのシングル10枚に収録されたカップリング全19曲を収録した「Disc1 表情」。現在までにベスト・アルバムもシングル集も発表されていないにも拘わらず先にカップリング集とはかなりのチャレンジにも思えるが、収録曲中のほぼ100%、18曲がアルバム未収録(うち6曲がニュー・ミックス)。人気者であるにも拘わらず、オリジナル・アルバムにも、またシングルにも、自身のこだわりとリスナーに対しての誠意を貫いてきたバンドの側面が窺える。大概カップリング曲といえばそのクオリティの差異も含め、表題曲にはならない、できない、しない、という様々な事情もあり、また多くが季節モノ、実験的要素の度合いが高いものといった印象が拭えないが、ここにズラリ並んだそれらを聴くと、リード曲としてもアルバム収録曲としても遜色なく、これまで陰に隠れがちな存在だったことが惜しくなるほど。人気を不動のものにした「シャングリラ」「風吹けば恋」のような、多くの人々が耳にしたことのあるナンバーがなくともバンドの魅力を伝えるには十分すぎる内容だ。
 メンバー3人はいわゆる"イマドキ女子"でありながら、それぞれが手掛ける詞は、旬の短い、いかにもそれ風なものではなくより普遍的で、そこには過度の詩的な表現も気取りも一切なく、代わりに「その歌に憧れ、その歌とともに成長する」という昨今あまり見かけなくなったリスナーとミュージシャンの幸福な関係性がある。そのオルタナティヴな感性と一筋縄ではいかないアレンジ力、構成力から、彼女たちはあくまでもロック・バンド的な立ち位置にいることに間違いはないが、数多のガールズ・バンドとは一線を画す、そんな稀有な存在でもあることを改めて思い知る。収録曲をリリース順ではなくランダムに並べたことも関係しているのだろう。バンドとしてのみならず、個々の女性としての成長や経験が甘い叫びとささやき、骨太なサウンド、作品にどう影響してゆくのか。未来のチャットモンチーとその道程が気になるところだ。
 他方「Disc2 横顔 <Acoustic Version>」。これまでパブリック・イメージや束縛といったものを受け入れつつ、ときにそれらに抗いながら、自分たちのチャットモンチーに正直であった彼女たちが醸し出すリラックスした雰囲気に面食らいつつも、穏やかで無性に切ない気持ちになる。曲のよさと親しみやすく飾り気のないキャラクター。バンドをここまで押し上げてきたであろういくつかの理由が、図らずもここで垣間見えた気がする。

Text by 篠原美江

『表情〈Coupling Collection〉』
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Ki/oon Records
発売中
CD(2枚組)
KSCL-1604〜5
¥3,360(税込)

遂にアメリカ・ツアーを果たしたチャットモンチー、久々のリリースは全てのカップリング曲を網羅したDisc1とアコースティック・セルフ・カヴァー集Disc2の豪華2枚組!初回限定盤のみデジパック仕様。同発の単行本とのW購入者応募特典応募ハガキ封入。

【チャットモンチー オフィシャルサイト】www.chatmonchy.com/

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