Catch Up!
ソラニンとは、とある植物の成長に必要不可欠な毒のこと。
痛みを感じながら、音楽と共に進んでいく若者達を描いた恋愛青春群像劇が遂に映画化！
©2010 浅野いにお・小学館／『ソラニン』製作委員会 （初出『Groovin'』2010年3月25日号）
Text by 宮城 宙（編集部）
美麗で繊細な画風と叙情的な台詞、そしてシニカルさと優しさを併せ持つストーリーが人気の漫画家、浅野いにおの同名コミックが満を持して映画化。
物語の主人公は、東京の片隅で暮らす芽衣子（宮﨑あおい）と種田（高良健吾）。なんとなく入社して、生活の為に仕事をこなす事に嫌気がさし、芽衣子が会社を辞めるところから物語は始まる。大学時代、軽音楽部で出逢った種田にも、好きなバンドに本気で取り組んでみるべきだ、と自分の想いをぶつける。それに触発された種田は曲作りに励むようになり、出来上がった曲でレコード会社にアプローチをかけたりする。しかし、その努力も報われず、徐々に日常に戻ってゆく…。そんな中、種田は交通事故に遭ってしまう。遺された芽衣子は、種田のバンド・メンバーに彼が遺した曲「ソラニン」を歌いたいと打ち明ける…。
あらすじだけを伝えると、お涙頂戴の恋愛映画に思えてしまうかもしれない。けれども本作は、芽衣子と種田を中心に展開する登場人物たちの成長物語だ。流れていく時間の中で、彼らはそれぞれに進む方向を模索する。バンド。仕事。恋人。思い描いていた理想と、目の前にある現実…。"大人"のように「まあいいや」と妥協することなく、彼らは「果たしてこのままでいいのだろうか」と懸命に思い悩む。そして観るものは思わず感情移入して自分を省みる。今の自分は、あの頃描いていた理想の自分になっているのか？最善の生き方をしてきたのか…？
そして見どころの一つである、芽衣子が不器用ながら「ソラニン」を熱演熱唱する終盤のライヴ・シーンで気付くだろう。大切なのは"理想の自分"でも、上手く生きることでもなく、前進出来ているかどうか、だと。ほぼフル・コーラスで披露される「ソラニン」はきっと、前に進む勇気を貰えることだろう。立ち止まっている全ての人に、是非観て欲しい。
『ソラニン』 4月3日（土） 全国ロードショー
■出演：宮﨑あおい、高良健吾、桐谷健太、近藤洋一（サンボマスター）、伊藤 歩 他
■原作：浅野いにお『ソラニン』（小学館ヤングサンデーコミックス刊） ■監督：三木孝浩 ■配給：アスミック・エース
物語に120％浸りたい人は必携！『ソラニン』の世界観を補完する4タイトルを紹介。
Text by 浜田幸子（編集部）／宮城 宙（編集部）
ASIAN KANG-FU GENERATION
『ソラニン』
Ki/oon Records
3月31日発売
Maxi Single
KSCL-1575
¥1,020（税込）
後藤正文書き下ろしによる映画主題歌。作詞は原作者の浅野いにお。過去だけが明確な後ろ向きの今、行き場の無い焦燥感が音の粒となって耳を駆け抜ける。衝動をリアルに掻き鳴らすその潔さに、ロックの然るべき姿を再確認する。c/wには映画のEDテーマでもある「ムスタング」（'08）をNEW MIXで収録。ステッカー封入の初回特典あり。（浜田）
ent
『『ソラニン』 サウンドトラック feat. ent』
Ki/oon Records
発売中
CD
KSCL-1539
¥2,100（税込）
サントラを手掛けるのはホリエアツシ（ストレイテナー）のソロ・プロジェクト、ent。シンセなどのエレクトロなアプローチを主体にするも、アコースティックな生音を織り込むことで無機質なサウンドに感情をもたらす。浮遊するメランコリックな音像は、映画が描く不安定な感情を見事なまでに表現している。ステッカー封入等初回特典あり。（浜田）
PARANOID RHYTHM SECTION
『0632』
vitmusic/バウンディ
4月21日発売
Maxi Single
DDCZ-1665
¥1,000（税込）
ハイスタの難波章浩氏を始め、数多くのアーティストから注目されている"アナログ大人ポップ"な5人組。『ソラニン』挿入歌を数多く提供した彼らだが、その中から「手のひら」のセルフ・カヴァーを収録。ヒリヒリする程エモーショナルな演奏と、女性Voマーサの芯の通った声が意外な化学反応を起こしている。（宮城）
『ソラニン』全2巻
小学館
発売中
書籍
各¥530（税込）
映画に感動した人には、必ず読んで欲しい原作コミック。全編通して盛り込まれている突発的なギャグや怪しい隠れキャラ（？）達が、物語との温度差を生みだして切なさを煽ります。映画にはないエピソードも満載で、登場人物への思い入れが加速すること必至。紙の上で奏でられる「ソラニン」も、映画に負けないほどに感動的。（宮城）
