#116 奥 華子 of SPECIAL INTERVIEW

SPECIAL INTERVIEW

奥 華子

キーボード1台で全国を歌い巡る弾き語りシンガー・ソングライター、奥 華子。今、改めてインディーズ時代からの名曲「笑って笑って」をシングルとしてリリースする。デビューして5年目に突入する今だからこそ思うこと、振り返る歌い手としての原点。じっくりお話を伺いました。『Groovin'』本誌では載せきれなかったインタヴューの完全版。

(初出『Groovin'』2009年5月25日号)

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ーー:奥さんにはかつて『Groovin'』での連載「腹が減っては戦は出来ぬ」を担当してもらっていました。毎回食べ物の話で…。
奥 華子:連載は本当に初めてで。テーマは何でも良いって言われて、絶対にネタが尽きると思ったんですよ(笑)。でも食べることは毎日のことだし、好きなことだし、何か書くことはあるだろうって。このテーマにしたんです。
ーー:連載を読んで思ったんですけど、奥さん、けっこう(量を)食べますよね?
奥:そうなんですよ。私はずっと普通だと思って生きてきたんですけど、ある時、中華料理屋さんでみんなで頼んでて、まず「ラーメン」とか頼むじゃないですか。で、私は「チャーハン」。「え?どっち?」って言われて。「いや、両方です」「え〜!?」みたいな。みんな食べないんだって気づいたんです。私はラーメンも食べたいし、チャーハンも食べたいって、その両方を。
ーー:連載でも親子丼とうどんの両方を選んでいる回がありましたしね。
奥:大体そういうのを頼んじゃいますね。
ーー:逆にダイエットの回もあったり…。
奥:常にダイエットとか言いつつ、痩せた試しがないんですけど(笑)。これ、2006年って…3年ぐらい前になるの?もう。キャー、怖い(笑)。この連載をやらせてもらってる時に、けっこうファンの方からも楽しみにしてるとか、私が良いって言ったものを試してみたりとか、反響がすごくあったので、やりがいがありましたよ。
ーー:ありがとうございます!では、今回のシングル「笑って笑って」について。曲自体はけっこう古くからのものですよね?
奥:もともとは路上ライヴを始めて、今まで知らなかった現実っていうか。夜、路上でやってると、駅からいろんな人が降りてきて、それぞれに色々なことを抱えてるんだけど、それでも一生懸命生きてるんだってことを肌で感じた時に、そういう想いを曲にしようと思ってできた曲なんですね。
ーー:それを今リリースしようと思われたのは?
奥:ずっと大切に歌い続けてきた曲の中には、デビューした時には、いつかリリースしたいなって思う曲がいくつかあって。その中でも特にそう思ってた曲なんです。デビューして何年か経って、そのタイミングがなかなか無くて…まだかな?って思ってたんですけど。きっかけのひとつに、大分県の小学校の閉校式で子供たちが、悲しいけど、笑って笑って、前を向こうっていうメッセージとして歌ってくれて。その時は子供たちが歌ってくれるような曲なんだっていう、ちょっとビックリしたという感じはありましたね。その事をきっかけに、子供たちと一緒にコンサートで歌わせてもらいました。その事を『誰も知らない泣ける歌』っていう番組で紹介してもらったのですが、反響も凄くありました。そういう番組のきっかけもあったんですが、今までは歌を歌ったり、CDをリリースするってことで、とにかく奥 華子を聴いてくださいとか、ずっとそう思ってたんです。当然そうなんですけど。それが、だんだん世の中が元気のない状況になったりとかして、私ができることって何だろうな?って思った時に、「奥 華子を聴いてください」ってことよりも、楽曲を知ってもらいたい、「笑って笑って」っていう曲でみんなが笑顔になったり、少しでも力になることができるかもしれないって思ったんですね。それで「今」かなって。自分の気持ちと、世の中の流れと、その番組のきっかけっていうのが重なりあって。今、出さなかったら逆にタイミングはないのかもしれないってところで、決めたんです。
ーー:以前、連載では「時代に残る曲を作りたい」って書かれていましたが、この曲でその目標に近づけたと思います?
奥:言ってましたね(笑)。でも、そうですね。個人的に聴いてもらえるのもすごく嬉しいんですけど、みんなで一緒に歌ってくれる、例えば学校だとか。それは、やっぱり違った嬉しさがあります。時代に残る、イコール、教科書に載るような楽曲を作りたいって思ってるんですけど、そういう意味では本当に嬉しいことです。
ーー:「笑って笑って」の歌詞は、楽しいから笑う、ではなく、辛いことがあるけど笑う、という言い方が奥さんらしいなと思いました。
奥:辛い事とか大変な事って結構あるなぁと、人生、比べてみると(笑)。でもそういう時があるからこそ、楽しい時間があったり、嬉しいことがあるじゃないですか。恋愛も寂しいこと、辛い時もあるけど、だからこそ、その人の存在が大切だと思える。人はみんな孤独で、ひとりだからこそ、みんなといる意味があるとか。けっこう、考え方がマイナスからプラスにいくのかもしれないですね(笑)
ーー:あえて逆側から…。
奥:そうですね、そこがちょっと暗いんですよね(笑)。全部がマイナス視点からきてるんです。それは昔から変わらないんですね。「これ、めちゃ明るい曲ができた!」と思って聴いてもらうと、「暗いねー!」みたいな。「えぇ!?」って。基本的感覚が違うのかもしれない(笑)。
ーー:「笑って笑って」はインディーズ時代にアルバムにも収録されていましたが、今回シングルとしてリリースされるにあたって、アレンジが変わってますね。
奥:インディーズの「笑って笑って」は完全にキーボード弾き語りなんですね。前に出したものをもう1回っていうのは、全くの新曲を出すのとは全然気持ちが違って、前よりも何か良いと思える、成長したりだとか、プラス・アルファしてるものを聴いてもらいたいっていうのがあったので。アレンジをどうするかは本当に悩みました。テンポを決めるだけで2ヶ月ぐらいかかったり、普通に新曲を決めるよりも、めちゃめちゃ時間がかかったんです。
ーー:テンポは少しあがりました?
奥:そうですね。ずっと歌いなれているのがあるので、音色ひとつ、テンポとか、試行錯誤が続きました。最終的には、テンポはすっごい揺れてるんです。弾き語りに合わせてるんで、一定テンポじゃないんです。
ーー:少し和風な印象にも聴こえますね。
奥:多分、メロディがもともと少し和風なんだと思うんです。ただ、弾き語りだと、それがあんまり強調されなかったんですけど、和っていうか…?アジアン?中近東っぽい感じに。使ってる音色とかも関係してるのかもしれないですけど。和っぽくしようとは思ってなかったです。
ーー:c/wの「僕たちにできること」はラヴ・ソングっぽくありながら、もっと大きな、曲地球の未来とかを歌ってる曲のような感じがしました。
奥:これは中国電力のCMソングになったんですけど、その時点ではまだサビしかなかったんですね。決まってから周りを作ったんです。だから少しそういう意識はあったかもしれないですね。中国電力のCM自体が地球環境に優しい、みたいなことでもあったりして。もろ恋愛ソングっていうよりも、もうちょっと広い意味での、地球のなかで自分が生きている意味、みたいな。さっきも「自分ができることって何だろう?」って言ったんですけど、そこにも通ずる、自分の役割、意味っていうところは、意識しながら作った曲ですね。
ーー:7thシングル「明日咲く花」にも近いイメージがありますね。
奥:かなりテーマは似てます、と言うか、同じですね、そういう意味では。ただ、「明日咲く花」の時は…アレンジの話になっちゃうんですけど、けっこうゴージャスで、「世界」を感じる曲だったと思うんですけど、今回はテーマとか歌詞は似てるんですけど、サウンドとかアレンジはすごく素朴で、「僕」を感じるようなものが良いなと思っていて、弾き語りと自分で入れたストリングスだけっていうシンプルなものにしたんです。
ーー:「明日咲く花」や「僕たちにできること」を聴いていると、奥さんの曲のテーマがどんどん広がっていっているような気がしますね。
奥:そうですね、これもまた「笑って笑って」がきっかけで色んな人との繋がりがあって、自分の中にも少し変化があるのかもしれないです。…また、長崎の五島列島にある小中学校が閉校する時に思い出DVDを作るのに「笑って笑って」を使ってくれて、そのDVDを送ってきてくれたんです。その映像にすごく感動して長崎に歌いに行ったんですよ。その閉校してしまう学校は生徒が8人しかいなかったんですけど、子供たちがこれから校庭でよさこいを踊るらしいよって言われて見に行ったんです。そしたら、みんな一生懸命踊るんですよ。踊っている時は普通に真剣にやるんですけど、踊り終わった時にガ〜ッて先生に駆けよって、先生も子供たちも、抱き合ってうわ〜って泣いてるんです。「えっ!?」って。私は、人との関係に、こんなに熱くなったことがないな〜と思ったし、その姿を見て何故か涙が止まらなかったです。その子たちは、うまく見せようとか綺麗に踊ろうとか思ってないんですよ。ただ「ありがとう」を伝えたいために踊ってた。歌もそうなんですよね。この歌を伝えたいじゃなくて、「ありがとう」の気持ちを伝えたいから歌ってる。「あ、そうだった!」みたいな。人としての原点を間近で見せつけられて、大事なことを教えてもらえました。自分がその時に何を想って歌うかの方が大切だなと改めて思うようになったんです。だから、そんなに劇的には変わってないですけど、1曲1曲が誰かの歌になるようなものを作りたいって思うようになりましたね。
ーー:c/wの2曲目の「Happy days」は、日常に寄り添った歌詞が印象的ですね。
奥:朝の風景とかは、自分でジョギングしてたりするとすれ違う人とか、犬を散歩してるおばあちゃんを思い浮かべて書いたりとか。あと、この曲は弱ってる時に書いたんですけど…弱ってるって(笑)、普通です。弱ってるのが普通なんですけど(笑)。自分を「これじゃいかん!」みたいな。頑張らないといけないなって思った時に作った曲ですね。だから自分への応援歌って意味もあると思います。
ーー:この曲はバンド・ツアーでも披露されていますが、レコーディングに影響はありましたか?
奥:実はですね、ライヴの時はもっと全然違うバンド・アレンジだったんです。で、そのバンド・アレンジにするか、もっと違うアレンジにするかっていうところで迷ったんですが、今回は…4つ打ちって言うんですか?低音をボンッボンッみたいな感じにしたんですね。そのリズムの方が歌詞が伝わりやすい。ライヴとは全然違うんですけど、今までに無い感じだけど、良いアレンジになったと思いますね。
ーー:曲の最後のコーラスはお客さんの声ですか?
奥:そうです。ついこの間、DVDのイヴェントで大阪とか仙台とか…各地を回ったんですけど、その時に「みんなの声をCDに入れたいです」って、ホーム・ビデオで録らせてもらったんです。奥華子-Aサブ.jpg
ーー:今回のシングルには「笑い」とか「笑顔」がすごくたくさん出てきますが、これって奥さんの中でキーワードだったりしますか?
奥:そうですね、路上ライヴをやっていた頃から、自分の歌を聴いて笑顔になってくれた人を見て、自分も笑顔になれる。笑顔は連鎖していくんだな〜と思って。自分にとって嫌な人がいても、とりあえず笑顔でいれば、乗り越えられるってことを最近すごく思うことですね。
ーー:それは「作り笑い」っていうのとは全く違う意味になりますね。
奥:そう!だから「嫌な人」がいなくなるんですよ。だんだん人を認められるっていうか。そうすると、自然に笑顔になれる、なんか良いことだらけになっていく気がするんです。
ーー:路上の時の経験が今すごく曲に表れているんですね。
奥:それは凄く大きいですね。路上ライヴを始める前はすっごい自信過剰だったんですよ。私が1番、オリコン1位になる、みたいな(笑)。
ーー:その自信も大事ですよね。
奥:そうですね、それがあったから、どんなにお客さんがいなくても続けてこられたっていうのはあったんですけど。でも、本当に今の自分じゃ全然ダメなんだっていう風に、ガキッて折られてから、変わりましたね。路上ライヴって、人としてどうかということを問われるような気もします。そこから、再スタートできたっていうのは大きいですね。今も。
ーー:今も路上は続けていらっしゃいますもんね。
奥:いやー、でも今は回数が本当に減っちゃってて。全然思うようにできていないんですけど。
ーー:では、7月15日にリリースが予定されているアルバムのお話を聞かせてください。
奥:今回は曲をけっこう選べるんですよね。この中からこれを入れようみたいな。今までは、これしかない、みたいな感じだったんですけど。時間的にも今までより余裕があるので、どういう1枚にしようっていうのを、こういうところが足りないから、こういうところを入れようとか…。あとは、今までアルバム3作全部冬だったんですね。今回は初めて夏に出すので。だから、ちょっと明るい曲も。多分、良いアルバムができそうですね。
ーー:シングルは3枚入るんですよね?
奥:ファースト以来ですね。そういう意味では、すごい濃いアルバムになると思います。
ーー:先にツアーが始まって、その途中でアルバムがリリースされますね。
奥:全国ツアーは必ず弾き語りでやってるんですけど。まだアルバムを出す前にやるところでは、初披露になるのでドキドキです、今から。
ーー:長いツアー、体調管理はどうされるんですか?
奥:もうWii Fitやりまくってますよ、今(笑)。あれ、すごい楽しいです。これ良いわ〜って、めっちゃ汗かきながら、サウナ・スーツを着てやるんですけど、良いです!
ーー:ツアーでは静岡にも来ていただけますが、かなり後半ですね。
奥:もう年末です。まだ内容は何も考えてないんですけどね。
ーー:最後に『Groovin'』読者に一言お願いします。
奥:連載「腹が減っては戦は出来ぬ」がまた復活できるように、よろしくお願いします(笑)!

(2009年4月22日/都内某所にて)
インタヴュー&構成:秦 理絵(編集部)

『笑って笑って』
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ポニーキャニオン
6月3日発売
Maxi Single
PCCA-02913
¥1,200(税込)
日テレ系『誰も知らない泣ける歌』でも大きく取り上げられたインディーズ時代の名曲が待望のシングル化。そのタイトルの通り、この曲を聴いた人みんなが自然に笑顔になれたなら、どんなに幸せなことだろう。c/wの2曲も必聴。

【奥華子 OFFICIAL WEB SITE】http://www.okuhanako.com/

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