甲斐名都 PART 2

SPECIAL INTERVIEW

甲斐名都

ひたすらチャレンジし続けたという2009年を経て、約2年半ぶりとなるアルバムをリリースする甲斐名都。自らイメージを壊しながら辿り着いた、キラキラ輝くその場所の名は『カテドラル』!自身の恋愛観なども語ってくれた、約1万字にわたるインタヴュー完全版を大公開!

(初出『Groovin'』2010年1月25日号)

PART 2

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ーー:恋愛に関する曲では、男女のすれ違ってる瞬間を切り取ってるのが殆どだったと思うんですけど。…なんですれ違っちゃうんですかね(笑)。
甲斐:はははは!そもそも私、男と女は分かり合えないと思っているので(笑)。そういう根本が凄い有って。恋愛してても「いつか終わっちゃう」っていつも思っているし、永遠が無いからこそ愛しく想えたりとか、悲しかったり切なかったりするっていう気持ちが私の根本にいつもあるから…。(男と女は)本当に生き物として、全く違うと思うんですよね。だから、失恋の乗り越え方も、女の子は次の恋愛をすることで、「この人と出会うために、あの人と別れたんだ」って思う事で乗り越えて行くと思うんですけど、男の人は、多分…凄い分かりやすいのが、(パソコンのデスクトップの)ゴミ箱を空にするボタンを押せないと思うんですよ。ゴミ箱には一応入れるんだけど、空にするボタンを押さないと思うんですよ。
ーー:そこでキープはしている、みたいな?
甲斐:はい。一応、捨てたって思っておく。でも、いつでも出せるようにしてとく。女の人は"ゴミ箱を空にするボタン"を押す事で次に行くと思うんですよ(笑)。でもやっぱり女の子は前の彼女の事とか、凄い気になるんですよ。男は引きずりそうってのは有るし。女の子は「私が一番であってほしい!」っていつも思うだろうし。だから、根本的に分かり合えない!残念ながら。
ーー:その男女のすれ違いについての甲斐名都さんの恋愛観が、最後の「雪の降る街」「雪の降らない街」に出てますよね。
甲斐:そうです。そうなんです。
ーー:どうでした?分かり合えないだろう男の目線で「雪の降る街」の歌詞を書いてみるのは。
甲斐:いやー、なんか…かわいそうだなあって思いながら(笑)…歌詞を書きました。
ーー:かわいそう(笑)?
甲斐:かわいそうに…と思いながら書いていました。凄い面白かったです。実際、男性がこれを聴いて、(2曲のうちの)どっちに共感してくれるんだろうっていうのは凄く興味があるというか。やっぱり、「雪の降る街」に出てくる男の子は、いつまでも出逢ったときの彼女を忘れられないでいるけど、(「雪の降らない街」の)彼女はどんどん今を生きているんですよ。
ーー:積極的に忘れようとしてますよね。
甲斐:それが女の子っていう生き物だと思うし。なんか凄く皮肉な2曲だと思います。はい。
ーー:女の子が主役の「雪の降らない街」は2008年にデジタル配信されていますが、時間が経ってから「雪の降る街」を作ったんですか?
甲斐:いえ、同時に作っていたんです。「雪の降らない街」を先に作って、でも、作りながら「雪の降る街」も作ろうと思って。同じ景色を見ていた2人が、違う景色を見て、何を思っているのか、みたいな。こう対にして書くっていう。
ーー:でも自分は男なんですが、「雪の降らない街」のほうが好きですね。
甲斐:ありがとうございます。そうですか。
ーー:前に進もうとしている反面、まだ忘れられないというか。
甲斐:やっと思えるようになったというか。ずっと(過去を)観ないようにしながら頑張っていたけど、ちょっと立ち止まって、過去を受け入れたりできたことで、本当の意味で前に進めると思うんですよね。そういう事を書きたかったんです。
ーー:今回のアルバムには、曲を他の方に書いて頂いて、そこに歌詞を当てはめて書くというものが5曲ありますが、製作作業の中で印象的だったもの、苦労したものがあれば教えて下さい。
甲斐:自分でも作詞作曲するので、その上で人の曲に詞を書くっていうのは、聴いた瞬間に「これをテーマにして書こう」とか、掻き立てられる曲だったら人の曲でもいい、って思っているんです。本当に出逢いだと思っていて、曲は。今回の5曲は、全部インスピレーションを掻き立てられた曲なんです。どの曲も本当に出逢うべくして出逢えた曲だし。普段自分で作ってると、どうしても自分のクセが出てしまうと思うんですけど、曲調としては、自分の作っている曲とはやっぱり全く違う展開だったりとか、メロディラインだったりとかして、そういう曲でヴォーカリストに徹して歌えるっていうのも、凄くヴォーカル力を高めてくれた5曲で。苦労したといえば、やっぱり私は今まで詩をまず書いて、曲をつける事が多かったんですよ。でも当然(この5曲は)曲先になるので、その言葉数の制限がある中で、自分の言いたい事を表現するっていうのは、凄くチャレンジで。でもそれをやることで、自分で作詞作曲した曲も今までは一度完成したら、それを客観的に見れなかったんです。それが出来るようになりました。
ーー:もう少し具体的に教えてもらってもいいですか?
甲斐:例えば自分で作詞作曲しますよね。で、見直して「このくだり、要らないな」と思ったら、その部分をごっそり取ったり出来るようになった。今までだったら、あれも言いたい、これも言いたいから、じゃあメロディ付け足そう、とかしちゃってたんですよ。でも人の曲だと、付け足す事が出来ないから「この一行で、あれもこれも言える言葉を探そう」とか、ピース探しをしなきゃいけなくって。その作業がすごく自分にとっては面白いし。本当にパズル遊びしているみたいな感覚で。私は本当に言葉と戯れるのが好きなので、そのたった5文字の為に何時間も「わー、全然良い言葉浮かばない!」って悩んだりとかするんですよね。でもそれを見つけた時には、もう明らかに正解の言葉が浮かぶ。「あ、これだったんだ!」って。それが意外に簡単な言葉だったりするし。なんかその感覚は自分で作っていた時は分からなかった創作の仕方で。言葉のセンスとかを凄く研ぎすませてくれる作業で。
ーー:そういう作業を経ているからこそ、今回、ご自身で曲を作っているものに関してもストレートな表現が多くなったりしてるんですかね?
甲斐:ああー、そうですね。だから自分で作ってても、若干曲先も出来るようになってきて。「ULTRA She」とかはギターで曲と詩を殆ど同時に作ったりとかして。詞先ばっかりじゃなくなってきたのも大きいと思いますね。
ーー:「虹のキオク」は、レミオロメンの前田啓介さんと念願の共作ということですが。製作作業はいかがでしたか?
甲斐:以前からずっと私はレミオの大ファンなんです。レミオのサポートをやっている皆川真人さんっていうキーボーディストの方が、私がインディーズの時からずっとサウンド・プロデュースを手掛けてくれていて、そういうところで前田サンと繋がってはいたんです。最初は皆川さんも含めて一緒にお酒飲んだりする仲間みたいな感じで。で、いつか一緒にやりたいねって言っていて、やっと今回共作が出来たんです。前田さんはもう、お酒を飲むか、音楽の事を考えてるかどっちかなんですよ。本当に音楽に対してストイックだし、愛情深いし。今回、私と曲を作ったときも…なんて言ったらいいのかな…前田さん自身の欲とかは全く無しで、私がどうしたいのか、なっちゃんだったらきっとこうするのが良いんじゃないか、とか、本当にそれに徹してくれるというか。本当にプロデューサー気質な方で。私の今までの色んな曲とか声質も踏まえた上で、なっちゃんが歌うんだったら、こういう曲が合うとか。そういう事を本当に真剣に考えてくれてるのが伝わってくるから、こっちもガチンコでぶつからなきゃって思わされたし。普通に喋っていても、常にライヴでお客さんを楽しませるにはどうしたらいいかとか、この曲をライブで歌ったときに感動する展開とかアレンジとかを凄い考えてるなってことが伝わってくるし。これぐらいストイックに音楽に情熱を傾けたからこそ成功した方なんだなって。間近で観れて、凄く刺激を受けて。私が書いた歌詞についても凄く読み込んでくれて、やっぱり私が作り手として、どれくらい入れこんでこの歌詞を作ったかって言うのを考えてくれているから、生半可な気持ちで意見を言わないんですよ。ちょっと軽い気持ちで意見していないのが凄い分かるんです。「ここはこうした方が良いんじゃないかな」っていうときにも、凄く私を尊重した上で、「でももっと良くしたいから言わなきゃいけない事を言うよ?」みたいな。凄く伝わってくるし。私はそれくらい真剣に歌詞とか音楽とかに関われているかなと凄い思わされましたね。
ーー:きっと「ワンダースノウ〜素直になって〜」での末光 篤さん(SUEMITSU & THE SUEMITH)との作業も、そういうぶつかり稽古的なところがあったんじゃないですか?
甲斐:そうですね。でも末光さんは前田さんとはまた全然違う方で。末光さんの場合は「僕が表現したい音はこう!」っていうのがあって。でも私は私で「甲斐名都としてこういう表現をしたい!」っていうのがあるから、そのぶつかり合いでしたね。だから、ほんと今回、色んな方とセッションできて、逆にじゃあ私は甲斐名都として、どういう歌詞を書いて、どういう歌い方をすれば良いんだろうって言うのを、それぞれで考えさせられたし、客観的に見られるようになりましたね。面白かったです。
ーー:とても難しい質問だと思うんですけど、収録曲13曲の中で、1番思い入れがある曲を教えて下さい。
甲斐:そうですね…。うーん…。まあでも「同じ空を見上げてる」がやっぱり1番…好きとかとはまた別ですけど。やっぱり、この曲に出逢ってなかったら今の自分は無いと思いますね。もっとメッセージを伝えたいって思えるようになったりとか、本当単純に凄い自信にも繋がったし。今までだったら多分「これが私の伝えたい事、今やりたいこと!」ってだけで曲を発信してたと思うんですけど、ディズニー映画作品の為に歌を歌うってことで凄い勉強になったし、一番成長させてくれた曲だと思うので。重要ですかね。多分、今後もずっと歌い続けて行く曲だと思うし。より大きいチャレンジをさせてくれた曲なので。
ーー:さて今回、初回限定盤にはDVDが付いていて、シングル曲3曲PVが入っているということですが、見所を教えて下さい。
甲斐:やっぱり「ワンダースノウ」は凄く見所です。私が携帯小説を今回初めて書いて、それが映像になっているっていうところで是非観てほしいです。
ーー:PVだけ観ると、色々深読みしてしまう内容ですよね。
甲斐:そうですね。小説も併せて読んで欲しいですね。(小説が同梱されている)初回盤を買わないと、ちょっと理解が出来ないかもしれません(笑)。これでゆっくり読んでもらえるといいかなと。また今回、このアルバムの曲をモチーフにして新しい携帯小説を書く予定もあるんです。曲を小説にすると、また曲を聴く印象も変わるし。そういうのは今後自分のライフワークとして、ずっとやっていきたいなって思っています。
ーー:それでは2010年の目標を教えて下さい。
甲斐:目標ですね…。2009年が本当に、自分の為に頑張った1年だったんで。もちろん、アルバムを引っさげてのツアーもやりますし、今後の曲作りもそうだけど、もっともっとみんなに向けての活動を2010年はしていけたらいいなと。
ーー:より皆に近づく感じですかね。
甲斐:そうですね。またそこから得たものを、また新しい自分の挑戦に繋げていきたいし、それの繰り返しと思うんですけど。はい。2010年はそんな感じで。
ーー:最後に『Groovin'』読者に一言お願い致します。
甲斐:本当にあの…今の甲斐名都が、26歳の私が今考えている事がギュッと詰まったアルバムなので、これでもっともっと甲斐名都に興味を持ってもらって、ライヴにも是非遊びに来て欲しいし、これからも注目していて下さい、と(笑)。

(2009年12月21日/都内某所にて)
インタヴュー&編集:宮城 宙(編集部)

『カテドラル』
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tearbridge records
発売中
CD
[初回限定盤]DVD付 NFCD-27257/B ¥3,990(税込)
[通常盤] NFCD-27258 ¥3,000(税込)

約2年半ぶりとなる2ndアルバムが遂に到着。大聖堂のステンドグラスのような、色とりどりにキラキラひかる全13曲は、あなたの明日も輝かせる!初回限定盤には、シングル3曲のPVを収録したDVD、甲斐名都書き下ろしの小説「ワンダースノウ」ブックレット封入。

※写真は左が[初回限定盤]、右が[通常盤]のジャケットです。

【甲斐名都オフィシャルサイト】www.kainatsu.com/home/index.html

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