#86 広瀬香美 of SPECIAL INTERVIEW

SPECIAL INTERVIEW

広瀬香美

"冬の女王"広瀬香美が、約2年ぶりにスペシャルな贈り物を届けてくれました!季節限定?いえいえ、とんでもございません!24時間、365日、あなたの心をサポートする、潤いに満ちた豊かな"愛情"と、ビタミン豊富な"元気"を詰め込んだニュー・アルバム『GIFT+』(ギフト・プラス)。過去に抱いたあのピュアな気持ちにタイム・スリップしながら、未来に向かう今の自分にささやかな勇気をプレゼント…。デビュー15周年を迎え、今なお多方面に活躍を続ける御本人に、今回インタヴューさせて頂きました。ご本人によるライナー・ノーツも掲載しておりますので、ぜひご覧下さい!

(初出『Groovin'』2006年11月25日号)

PART 1

広瀬香美-A.jpgーー:まずはニュー・アルバム『GIFT+』の完成おめでとうございます。前作『LOVE BIRD』は少し力の入った作品だったとの事ですが、今作はどうでしょう?
広瀬香美:前作の前に2年くらいお休みをしていたので、いざアルバムを作るとなった時に、声も調子がいい、書き留めた言葉も沢山あって、メロディも面白いのが出来たりと、あらゆるものを試して詰め込んだ作品でした。でも今回は、映画のタイアップやCMソング(編集部註:今秋公開の『ペルナのしっぽ』主題歌、富士フィルム「お正月を写そう〜」、キリンビバレッジ「FIRE」他多数)に楽曲提供をしていくうちに、自然な流れでアルバムを作る事になって。カラフルにしようとは心掛けましたが、グッと力を入れた感じもなく、今の私の心境がそのまま表現されたアルバムですね。
ーー:タイトル『GIFT+』のネーミングはどのようなところから?
広瀬:私はL.A.に行く機会が多いのもあり、客観的に日本人を見るとやっぱり元気がないというか…諦めてしまっているというか…。私は生まれながらポジティヴに考えられたり、どうしても明るいんですよ(笑)。なのでそれを生かして、皆さんをちょっとでもプラスに、元気にしたいなと思って。それで、タイトルにいい言葉がないかなって思った時に、「情熱」って言われちゃうと少し身構えそうだけど、+(プラス)、ちょっとでいいですからって言ってあげる事で「じゃぁ、ちょっとでいいんですか?」って皆さんが思ってくれて、金庫の中のような、シェルターの中のような、心の鍵が開けばいいなって。それで「情熱+」という曲の歌詞を書き終えて、自分の言いたい事がコンパクトにまとまってるなって凄く思ったんです。これはアルバムの核になると思いました。それと同じに「GIFT」という曲も、自分の中で曲も歌詞もすごく素直に書けたので、だったらタイトルを合わせてみようかと。もし宜しければ元気になりませんか?って、ささやかな感じが出るかなと思って付けました。
ーー:+(プラス)というキーワードが使われている商品を目にした事がキッカケで、広瀬さんは意図的に何事も+(プラス)にして行かなければいけないと思ったそうですね。
広瀬:私は、何事も人生は経験値だと思っています。特に日本のみなさんは失敗しないんですよね。頭で考えちゃって、失敗しそうな事はしない。でも子どもの頃は、転んでみてはじめて転んでみてどうなるかが分かる。だからやってみなければ、何か経験しなければ何も始まらない。裏を返せば、失敗とか、いけないこととか、失恋とか、何か痛い事って次にとってのすごい栄養だと思うんです。だから良い事はもちろん、マイナスもプラス。だから全部いい事です。
ーー:そうした思いを歌詞にする事で見えてくることがあったり、また自分に戻ってくるものもありますよね。
広瀬:そうですね。ただ本を読んでいるだけでもダメで、本を読んで考えて、思考を詰める事が大切。すごく素敵な大人になれるかどうかのキー・ポイントだと思っています。私は仕事を通して考える経験を与えられている訳ですが、仕事だから大変な事もありますけど、ありがたい機会をもらえていますよね。
ーー:歌詞はどの様に作られますか?
広瀬:やはり音楽が好きで音楽から入っている訳ですから、作詞は作業の中で一番苦手とする作業なんですよね…。言葉に向き合って問題を解決するなんて、この仕事をするまで無かったですし。だから苦手な分、一番時間もかけます。こまめに浮かんだ言葉を書き留めたり、どんな言葉が流行っているのかリサーチしたり。その書き留めた沢山のキーワードや感情を組み合わせて作りますね。
ーー:本当に元気になるアルバムです。90年代の広瀬さんを彷佛とさせる曲もあれば、1曲目はまさに今年を象徴するような、ワールド・カップの熱気が蘇るナンバーですよね。
広瀬:1曲目の「サッカーボールみたいに転がって」は本当に難産でした。今回はタイアップが先行したコンセプチュアルな楽曲が多かったので、よりストレートに自分のメッセージを伝える曲も作りたかったんです。曲は去年にはあったのですが、歌詞を付けたら色々と直したくなってしまい、アレンジも色々とアイデアが浮かんでしまって。一旦止めて違う曲を作ってからまた戻ったりして一番時間をかけましたね。でも色んな行程でトライをしたんで作業的には一番楽しかったです。
ーー:出だしの巻き舌のコーラスや、女子アナ風の実況とか面白いですよね。
広瀬:"口が凝る"ってこういう事かって、翌日の口の重たさで痛感しましたね。
ーー:シンプルな弾き語りの「No More Sad」は、広瀬さんが楽曲制作をする姿が浮かぶ感じですね。
広瀬:そうですね、一番楽に出来た曲ですね(笑)。
ーー:楽曲の合間に、力強い足音が鳴りますよね。広瀬さんのHPのBlogによると、実際にグランド・ピアノのペダルの横に板を張っていましたね。
広瀬:レコーディング前に練習をしていた時に、気付いたら床を蹴っていて。だったら入れてみる?って事になって。
ーー:歌いながら弾くのが大変だったとの事ですが?
広瀬:そうですね。集中力がもたないから4〜5時間で一気にやりましたけど、結局10回くらいは録ったかな。でも弾き語りの一発録りにしようと決めていたので頑張りました。
ーー:今作は色んなアレンジャーさんと作業されていますね。
広瀬:「サッカーボール〜」等をお願いしたh-wonderさんは、昔からご一緒している信頼している方です。ですが、そういう方ばかりだといい意味での"違和感"が出てこなくなってしまうので、なるべく新しい方ともご一緒しようと心掛けています。
ーー:ご自分でもアレンジをされる分、他人のアレンジって気になりません?
広瀬:初期の頃はあれこれ指示していたんですけど…。でも最近はそれをしちゃうと逆にいいものが上がってこないんですよね。幸せな事なんですけど、アレンジャーさんの年頃的に「広瀬さんの曲をよく聴いていました」とか「広瀬さんと仕事するのが夢でした」という方が多くて。だからご自由にと言っても、それでも緊張なさる方が多い。なので、今は何も言わずに皆さんのいいところを発揮してもらっています。
ーー:いい意味で肩の力を抜いて、信頼関係を築いていますね。
広瀬:そうですね。皆さんが支えて下さるので、頼りきって、体重をかけて…。それがいい形になってます。
ーー:ズバリ、音楽家と歌手、どちらの活動がお好きですか?
広瀬:やはり曲を作るのは一番好きですね。でも来年の2〜3月にツアーがありますので、今はそれにチャンネルを合わせて歌を重点的にやっています。どんなステージにしようか考えてる時が一番楽しいですね。3月まではツアーの事に熱中しているんじゃないかな。
ーー:久しぶりの全国ツアーとなりますよね。とても楽しみです!
広瀬:前回は初めてのツアーという事もあって、かなり大変でした。日本武道館や大阪城ホールと、一瞬にして大勢の人が聴いて下さるステージに立ったので、客席がもの凄いパワーで私の脂肪とかを吸収するんだと思うんですよ。だから消耗した分もの凄く食べるんですけど、どんどん痩せてしまって…。歌詞が分からなくなって曲を止めちゃったり、転んじゃったりとか失敗もありました。その時は嫌で嫌で仕方なかったけど、経験してなかったら今のこの感覚ってなかったと思う。だから今回のツアーは"自分が楽しいと思える"事が自分のテーマです。だから楽しい事だけをしたいと思います。
ーー:聴き手に元気をくれる広瀬さんが、ネガティヴになった時の対処法って何ですか?
広瀬:めげないんだよねぇ、私って(笑)。でもL.A.に行き始めた頃に、レッスンの先生によく叱られていたんだけど、その時に「人生は短いんだから、24時間以上引きずったら損する!」って言われたの。24時間はうんと考えていいから、そこから先は真空パック!過去のものとして経験値にしなさいって。それがポジティヴな私の性格にはまっちゃって。その言葉が、今も励みになっていますね。
ーー:なるほど。広瀬さんの全身に漲るポジティヴなパワーがアルバムそのものだと実感します。では最後に『Groovin'』の読者へメッセージをお願いします。
広瀬:私の楽曲は、昔から変わらないんですけど…明日学校行きたくないな、仕事がかったるいなぁって時に、広瀬でも聴いてみようかなって思ってもらえたらいいなと。一緒に遊びに連れて行ってもらえるのも嬉しいですけど、思考がネガティヴになった時に、広瀬が何でもいいって言ってるから1歩出てみるかって、前へ前へと出るような聴き方をしてもらえたら私は幸せですね。

(2006年10月27日 東京・渋谷にて)
インタヴュー&構成:浜田幸子(編集部)

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