#37 山下達郎 of SPECIAL INTERVIEW

SPECIAL INTERVIEW

山下達郎

遂にリリース!長らくCD化が待ち望まれていたシングルのカップリング曲に加え、鈴木雅之やKinKi Kidsへの提供曲のセルフ・カヴァー、そして新曲までもを収録した『RARITIES』が完成!そして遂に、山下達郎さんへのインタビューが実現しました。今までの作品やこの『RARITIES』について、そしてこれからの展望についてたっぷりと語られたスペシャル・インタビュー、最後までじっくりとおつき合い下さい。

(初出『Groovin'』2002年10月25日号)

PART 1

山下達郎-A#37.jpgーー:まずは『RARITIES』が完成しての、率直なご感想を。
山下達郎:もう疲れてヘロヘロです(笑)。(出すって)決まってからのスケジュールがタイトだったので、果たして期日内に上げられるかどうかっていう感じでね。始めは単なるB面コレクションみたいな感じでっていうことだったんですが、でもそれじゃ作品的に安直だと思って、プラスαを付けたいということで…。でも期日内に全部自分でやりたいことをやって終わりましたから、セーフ!っていう感じですね。本当は次のアルバムを想定して録音を始めてたんですが、それを一時中断して、これを作り始めて…。実質1ヶ月半ぐらいでしたよ。
ーー:『RARITIES』は達郎さんから見て、どんな作品ですか?
山下:純新譜でもないし、かといって旧譜の寄せ集めでもないんです。15曲中5曲は完全な未発表ですし…。『RARITIES』というのは当初のタイトルで、その時にはシングルのカップリング曲を集めて、それにライヴ音源までもを含めてっていうことで考えていたんですけど、そうとも言えなくなってきてね。だから今作の定義は一言で言えば「スタジオ・レコーディング未アルバム化作品集」ってことになりますね。これでスタジオ・レコーディングのもので公に発売された音源は、ほぼ全部アルバム化されたことになります。だから裏ベストという捉え方もあながち嘘ではなくてね、『TREASURES』はシングル・コレクションのベスト・アルバムだったんですが、そこに収録されたシングルのカップリング曲でスタジオ録音のものが全て入ってる訳ですから、『TREASURES』と『RARITIES』をペアで聴いてもらえればシングル全部が聴けるということですね。まさに『TREASURES』と対をなす作品です。
ーー:『RARITIES』のような作品を出そうというアイディアは?
山下:やはりいつかは出さないと、とは思ってましたね。特に今は(8cm)シングル・マーケットは壊滅的だから、市場の動向でどんどん廃盤になっていって、そうするとカップリングは消えていく訳ですよね。カップリングってただでさえアルバムに入らなくて、浮いてる場合が多いんですけど、それがいやで90年代に入ってからはライヴ・ヴァージョンをカップリングに入れてきたのが、それも廃盤になってきて…。
ーー:『RARITIES』には83年から昨年まで18年間に渡る作品が収録されていますが、制作をされていてその辺の時間差や温度差は気になりましたか?
山下:意外と気になりませんでしたね。基本的にスタジオとミュージシャン、エンジニアが同じで最小限のメンバーなので、それが違和感のない理由でしょうね。どんどん時代に合わせるタイプの人は音も変わって行きますけど、僕の場合はワン・パターンだから変わりませんね。エンジニアは吉田保さんで、使っているマイクも同じで、音響ハウスっていうスタジオは『GO AHEAD!』を78年に録ったところですけど、その時のマイクは今でも生きてて、それで「LOVE GOES ON」も録ってる訳ですから。特に最近は吉田さんにあまりエコーをかけないように頼んでるから、そうすると77〜78年の『SPACY』や『GO AHEAD!』の頃のエコー感に近づいてきてるので、ほとんど同じですよね。
ーー:さて『RARITIES』ですが、選曲や曲順選びのポイントは?
山下:前半は新譜みたいに聴こえる感じにしようと思って(笑)。1曲目を「BLOW」にしようっていうのは決めていたんです。最初はシングルのカップリング曲を全部入れようっていうことで始めたんですが、完全にオーヴァー・フローするんで、それで泣く泣くライヴ・ヴァージョンはほとんど諦めて。でもスタジオ・レコーディングのカップリングだけだと何か物足りない感じがしたんで、それで新曲やセルフ・カヴァー、アウト・テイクも入れるかっていう風になったんです。本当は新曲は次のアルバム用にとってあったんですが(笑)。春先のカルピス・ウォーターのCM曲はまだフルで完成してないんで、そんな感じで次のアルバム用に2〜3曲はとってありますけど。本当は作業を始めた時には、古い音源は聴かないでおこうと思ったんですよ。スケジュールがタイトだったから、古いのを聴くと絶対に手を入れたくなるでしょ。でも結局、15曲中9曲は手を加えちゃいましたね。加えるべきところには全て手を加えて、それで1ヶ月半で仕上げたんです。「スプリンクラー」のLONG VERSIONなんか、ここに入れないと永久に陽の目を見ない気がしてね。
ーー:シングルのカップリング曲(昔で言うところのB面曲)って、一般的にヒット狙いのA面と違ってアーティストが本来持つ違った側面や趣味志向が表れるという意味では興味深いものですが、達郎さんにとってのB面感とは?
山下:B面は特に内省的になりがちですよね。僕は特にそうなんですけど、若い頃の音楽はある種自然に対するような情景音楽が多かったんで、情景感とか描写音楽にシフトするのがB面の特徴ですね。A面はここ10年ぐらいはタイアップもあるんで、それに応える必要も出てくるんですけど、カップリングではもっと自由な発想で本来の内省的なものの見方が出てきますよね。だからどの曲も思い入れが強くて、愛着があるんですよね。「BLOW」は特に思い入れがありますね。だから初めから1曲目にしようと思いましたし、あと「好・き・好・き SWEET KISS!」と「モーニング・シャイン」は、作品として詞と曲…特にメロディ・ラインに愛着があるんですよ。実はシングルって、タイトなスケジュールで急にリリースが決まるものなんですよ。例えばいわゆるアイドル・スターだと、4ヶ月に1枚出すような年間のリリース・ローテーションが初めから決まってると思うんですが、僕のような場合は、大体シングル切るときは何かタイアップが決まったからとか、そういう急遽っていう場合が多いんですよ。常にタイトで。だからカップリングもそういうことで作ってきたからどんどん次のアルバムに合わないで浮いたものが出て来ちゃったんで、それがいやで(カップリングが)ライヴ・ヴァージョンにシフトしたのが90年代でね。でもこういう時代になるって、誰にも予測出来なかったですよね。アルバムはカタログとして、継続して発売されていて、RCA時代のものも出ましたけど、シングルに限ってはどんどん廃盤にされるから、だからこのアルバムはそういう意味では非常に必然性があるカタログなんです。今の時代だからこそ出しておくものなんですよね。

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