#37 山下達郎 PART 2 of SPECIAL INTERVIEW

SPECIAL INTERVIEW

山下達郎

遂にリリース!長らくCD化が待ち望まれていたシングルのカップリング曲に加え、鈴木雅之やKinKi Kidsへの提供曲のセルフ・カヴァー、そして新曲までもを収録した『RARITIES』が完成!そして遂に、山下達郎さんへのインタビューが実現しました。今までの作品やこの『RARITIES』について、そしてこれからの展望についてたっぷりと語られたスペシャル・インタビュー、最後までじっくりとおつき合い下さい。

(初出『Groovin'』2002年10月25日号)

PART 2

山下達郎-A#37.jpgーー:次にアルバム制作の秘話をお願いします。
山下:「MISTY MAUVE」は『ARTISAN』のアウト・テイクなんですよ。鈴木雅之さんに書いた曲のセルフ・カヴァーですけど、これは91年にミックス・ダウンした当時のマスターがあったことさえ実は忘れてたんですよ。今回整理してたら出てきて、それをそのまま使いました。多分原曲のアレンジとほとんど同じだったんで、『ARTISAN』から外したんじゃないかな。あとKinKi Kidsに書いた「HAPPY HAPPY GREETING」も原曲と同じアレンジなんですけど、セルフ・カヴァーの場合ちょっと捻った方がいいと思って、それで最初は自分でアレンジしてない「ジェットコースター・ロマンス」をトライしたんですけど、ユーロな感じが自分には合わないなって思ってね、だから正攻法でこの曲にしたんです。ただKinKi Kidsのオリジナルのオケにはジャポネスクな和太鼓や鼓も入っててそれを削って元のオケとコーラスと歌だけにしたんで、ORIGINAL DEMO VERSIONってなってるんです。「スプリンクラー」のLONG VERSIONはこういう長いものが流行ってて作ったんですけど、これは実際はシングルの長さのヴァージョンしかないんです。このLONG VERSIONはマルチ(・テープ)の音をコピーして繋いで切り貼りして長いものを作って、それとは別に演奏部分をループにして、そこに井上大輔さんのサックスを入れて、それを元のテープにはめたんです。(元のマルチは)リズムがアナログの16chで被せが24chという、逆になってるんです。
ーー:井上大輔さんとは、どういう繋がりなんですか?
山下:元々「悲しみのJODY」で井上さんにサックスを頼んだんですよ。その前にも井上さんのCMでコーラスやったり、あと井上さんの書いた曲でコーラスっていうこともあったんで顔見知りだったんですけど、ああいうサックスを吹かれる方っていないんで、それで「悲しみのJODY」の時に頼んだらすごかったので、それでもう1曲っていうことになってね。でもこの時期ツアーやリリースが多かったんで、これ以降LONG VERSIONは作らなかったですね。ただ僕のはダブじゃなくてマスター・ミックスですからね、手間もかかるんですよ。でもこの『RARITIES』の曲は全て、当時アルバムに入れるつもりで作ってたものなんですよ。「FIRST LUCK−初めての幸運−」なんかは『僕の中の少年』の直前の曲だったんですけど、そこに入れようとしたらすごく浮いたんでやめたんです。内向的なアルバムだったから。あと「モーニング・シャイン」は『ARTISAN』に入れたかったんですけど、アルバム用の候補曲が多すぎて入らなかった。「潮騒」のライヴ・ヴァージョンは初CD化ですね。「I DO」はビーチ・ボーイズのアルバムがCDで2 in 1化された時にこの曲がボーナスで入ってて、それを聴いてカヴァーしようと思って。その時はこういうものをまた何曲か作って『BIG WAVE 2』みたいにして出そうと思ったんだけど、結局1曲しかできませんでした(笑)。「TO WAIT FOR LOVE」はバート・バカラック作品のカヴァーで、これは『SEASON'S GREETINGS』のアウト・テイクですけど、テンポ上げて全部録り直しました。バカラックは初めてカヴァーしたんですよ。コーラスは(竹内)まりやと国分友里恵さんと僕の3人でアニタ・カー・シンガーズでいこうっていうことで(笑)。ヒット・ソングとしてはハーブ・アルパートのものが唯一ですけど、とにかくこれは曲が好きなんですよ。あと「LOVE GOES ON(その瞳は女神(Goddess))」は去年の秋から「サタ☆スマ」(現「デリ!スマ」)のエンディング・テーマでオン・エアーされている新曲で、本当ならシングル切らなきゃいけないんですけど、昨年の暮れから今年にかけてはRCA時代のリイシューやツアーがあって全く時間がなくて出来なかったので、リリースできませんでしたのでここに入れました。「君の声に恋してる」と同様、全部生で録りましたけど、この曲はダンヒル…ランバート−ポッター風に作ってみました。結果的にシュガー・ベイブ的な感じにもなりましたね。どんどん先祖帰りしていくんですよ。なるべく元に戻すにはどうしたらいいかっていうことを、最近よく考えているんです。「君の声に恋してる」みたいなものは昔からすごくやりたかったから、気に入ってるんです。ナイアガラっぽくやろうと思ったけど、結果的にトーケンズみたいなものが出来たし、最後の感じは一瞬、N.Y.でジョン・セバスチャンがスペクターにプロデュースしてもらってたらこうなっただろうみたいになるのは、やはり"三つ子の魂…"みたいなところですね。
ーー:あと最近は達郎さんのカヴァー作品が多いですが、これについては?
山下:1つだけ言えることは、やっておくといいことあるっていうことだね。諦めずにやること。49歳になって人にカヴァーされるとは、夢にも思わなかったですね。しかも20代の人まで。でも振り返ると80年代初めの『FOR YOU』から『MELODIES』の時期に夏のイメージだけで呼ばれるのが嫌になって、僕は原点に立ち返ろうと思った事があって、それで1つだけ自分でやってないことがあるって気が付いた。詞なんだよね。しかも男の言葉で歌いたかった。それを猛烈に思うようになって作ったのが『MELODIES』で、そうすると16ビートだけじゃなくて8ビートも出来るようになるから、だから1曲目が「悲しみのJODY」で最後が「クリスマス・イブ」というように、8ビートの2曲を敢えてあそこに置いてるんですよ。でも当時はなんで『FOR YOU』みたいなの作らないんですか?とか、こんな地味なもの作るんだとか、「スプリンクラー」も夏っぽくないって言われましたよ。今だと信じられないでしょ。その後その声に応えて「踊ろよ、フィッシュ」出したけど、リゾート・ミュージックが流行った時に、その流れに乗るのが絶対嫌だったんです。それでバラードを作りたいと思って「GET BACK IN LOVE」を出したのが、7年振りにベスト10に入ってね。開放的にしたかったんじゃなくて、僕の場合は結果的にああなったんですよね。音楽をやることは表現行為で、僕は70年安保の世代だからそこに表現者としての思想や信条を入れたかったんですよ。そのために音楽をやってるぐらいだから。自分の名前で作品を出す以上、そこに自分の思想や信条、美学、ポリシー…フィロソフィーを込めなかったら、何のために音楽をやってるのか分からないから。その意味でも『MELODIES』は、最も原初的な作品であるんです。でもあの時にあれをやってなかったら、とっくに終わってますよ。『POCKET MUSIC』の時にコンピューター・ミュージックで七転八倒したのも、今に生きてますしね。あの時培った自分で全部やったノウハウがあればこそですね。
ーー:では今後の活動予定と、ファンへのメッセージを。
山下:この『RARITIES』はあくまで次の新作までの繋ぎということで捉えて聴いていただければ嬉しいですね。でもレア音源をうたっているものにしては、それ程カルトな方向にも行っていないと思いますし、一般的な方がお聴きになっても楽しめる作品になっていると思います。ペースも上がってきてますんで、この次は夏前にアルバムを出したいですね。その後は来年の冬にオーケストラをバックに歌うツアーをやりたいです。『RARITIES』ツアーはありません(笑)。
ーー:本日はありがとうございました。
山下:ありがとうございました。

(2002年9月15日/東京・六本木にて)
インタヴュー&構成:土橋一夫(編集部)/協力:常磐安信(横須賀佐原店)

『RARITIES』
山下達郎-J#37.jpg




CD
ワーナーミュージック・ジャパン
WPC2-10001
¥2,913(税抜)
10月30日発売

今までにシングルのカップリングとしてリリースされた曲や未発表曲などに加え、「デリ!スマ」エンディング・テーマ「LOVE GOES ON(その瞳は女神(Goddess))」など、新曲や近年のシングル作品までもを収録したニュー・アルバム。初回盤のみ完全初公開オリジナルカラオケスペシャルCD付き。

【山下達郎 公式サイト】www.smile-co.jp/tats/

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