#16 ジェフリー・フォスケット of SPECIAL INTERVIEW

SPECIAL INTERVIEW

ジェフリー・フォスケット

昨年10月にはアルバム『12&12』をリリース、また12月6日には渋谷ON AIR WESTにて行われたドリームズヴィル・レコードの創立2周年記念イベント「ドリームズヴィル大感謝祭」にも出演し、待望の日本でのライヴも実現させたジェフリー・フォスケット。そのライヴの熱気がまだ冷めやらぬ12月7日、前日のライヴでも共演を果たした黒沢秀樹氏(L⇔R/HOW)と共に、スペシャル・インタビューが実現!最近のソロ活動、そして彼がツアーのバンマスを務めるブライアン・ウィルソンとのエピソードまで、興味深いお話満載の完全版でお届けします。

(初出『Groovin'』2001年1月25日号)

PART 1

ジェフリー・フォスケット-A.jpg黒沢:昨日は楽しかったです。以前『Groovin'』でジェフリーのことを書かせてもらたんですよ。
ーー:10月号の黒沢君の連載(「R&R LIBRARY」)で。
ジェフリー・フォスケット(以下ジェフリー):どうもありがとう!
ーー:黒沢君はもう10年ぐらいプロで活躍してきた、ギタリストなんですよ。
ジェフリー:ホント!
黒沢:L⇔Rというバンドで。
ジェフリー:L⇔R!いい名前。今バンドの調子はどうですか?
黒沢:今は、昨日一緒に出演させてもらったHOWというバンドで頑張ってやっております。ダリアン(・サハナジャ/編集部註:ワンダーミンツの中心メンバーで、ジェフリーとは共にブライアン・ウィルソンのツアーに参加している)にはHOWのCD送ったんですけど。
ジェフリー:そうなんですか。
ーー:彼はダリアンと友達なんですよ。
ジェフリー:それじゃ、去年のワンダーミンツのライヴには…。
黒沢:もちろん行きました。
ジェフリー:どうでした?
黒沢:最高でした!もちろんブライアン(のライヴ)でのジェフリーも見に行きましたよ。
ーー:僕は今友達とワンダーミンツのホーム・ページをやっているんですよ。"mintsmania!"っていうんですけど。
ジェフリー:あとでURLを教えて下さいね。
ーー:この名刺に書いてありますので。ダリアンも時々、自分でBBSに書き込みしてます。
黒沢:書き込みしてるんですよ!
ジェフリー:ホント!それ別人のダリアンじゃないですか(笑)。実は僕が書いてたりして(笑)。じゃあ家に戻ったら早速チェックしてみます。でもこの名刺、とてもいいですね。僕にもこんな名刺が欲しいです(笑)。
ーー:次回来日される時までには、用意しておきます(笑)。ではこの辺で、本題に。まず昨日のドリームズヴィル大感謝祭に参加されての、率直なご感想をお願いします。
ジェフリー:まずは呼んでくれて、どうもありがとう。ドリームズヴィルの2周年ということで、それに参加出来たことももちろん嬉しかったし、日本で演奏するのはアメリカのどの都市で演奏するよりも、実は好きなんです。
ーー:見ている僕たちも、本当に嬉しかったです。日本のファンはいかがでした?
ジェフリー:とても素晴らしい。自分たちにすごくリスペクトしてくれているのがよく分かるし、それに(オーディエンスが)一緒に返してくれるものがありますね。ただライヴを観ながらあくびをしていたり、バーに飲み物を買いに行っちゃったり、そんなのじゃなくて。
ーー:来日は今回が何回目ですか?
ジェフリー:2回目です。
ーー:99年のブライアンの公演も、その後に行われた新宿でのインストア・ライヴも見に行ったのですが…。
ジェフリー:どうもありがとう!
ーー:どれも素晴らしくて。でも今回のライヴはお一人で演奏ということで、バンド編成とは違った意味での緊張やプレッシャーがあったのではと思うんですが?
ジェフリー:『ペット・サウンズ』でのツアー(編集部註:ジェフリーは『ペット・サウンズ』を、オーケストラを加えた編成でライヴ演奏する、ブライアン・ウィルソンの『ペット・サウンズ』シンフォニック・ツアーに参加し、全米を公演してきた)の時は、「ステージに上がるのにナーバスになりませんか?」って訊かれても全然そういう緊張感やプレッシャーは無かったんです。それは自分の曲を演奏しているんじゃない、ということももしかしたらあったのかもしれません。でも今回は自分のショーで自分の音楽を演奏するということで、すごく緊張しましたね。今までにこんなにプレッシャーを感じてたのは、恐らく2回目ぐらいです。多分以前にそれ以上の緊張を、一度ぐらいはどこかで体験してると思いますので、そうしときましょう(笑)。
ーー:昨日のライヴは昔からビーチ・ボーイズのファンだった年輩の方から、最近ジェフリーを知った若い女の子まで様々なファンの方が来られていましたが、ジェフリーから見た日本の音楽はどう映りましたか?
ジェフリー:何度か演奏中に客席の灯りをつけてくれたんでステージからお客さんの顔も見えたんですが、年齢層もすごく広くてサラリーマンの様な方もいれば、すぐ隣にはTシャツにデイパックのようなラフな格好の若い人達もいたりして。若い子から自分のような歳のいった方まで来られていたんで、それはすごく良かったと思いますよ。
ーー:演奏されていて、ここはアメリカとは違うなって思われたことはありましたか?
ジェフリー:演奏しているときは、実はあまりお客さんのことは考えないんですよ。自分がステージに上がるときに考えているのは、神様のためにもしくは妻のために全てを捧げるということなんですよ。それでもし僕の音楽を聴いてくれるお客さんがいたら、どうぞ聴いて下さい、というスタンスなんです。
ーー:その辺、やはりちょっと日本のアーティストとは…。
黒沢:違いますよね。
ーー:特に昨日センチメンタル・シティ・ロマンスと共演された時、すごく嬉しそうだったのが印象的だったんですよ。
ジェフリー:楽しかったですね。彼らは本当に上手で、感動しました。長門(芳郎)さんからは、「とりあえずセンチメンタル・シティ・ロマンスの音を聴いてみて、気が向いたら一緒に演ってみてよ。絶対気に入るはずだから。」って言われてたんですよ。
ーー:バーズの曲(編集部註:前日のライヴでは、センチメンタル・シティ・ロマンスの演奏にジェフリーがゲスト参加する形で、ザ・バーズの名曲「So You Want To Be A Rock 'N' Roll Star」を演奏した)を普段演奏されることなんて、あるんですか?
ジェフリー:昔(ザ・バーズの)ロジャー・マッギンと3年間ぐらい一緒に演っていたことがあるんです。だからザ・バーズの曲はほとんど出来ます。去年"ウィスキー・ア・ゴー・ゴー"の35周年記念のイベントで、ロジャーが再結成みたいにザ・バーズのメンバーを集めたんですが、その時にも呼ばれて共演しました。
ーー:それでは、お手のものですよね(笑)。
ジェフリー:そうそう、楽だよ(笑)。
ーー:ではこの辺で次にアルバムのお話を。10月に発売された『12&12』はすごくいい作品でよく聴いているんですが、ザ・バーズのメンバーをはじめ色々なゲストが多数参加されていますよね。この辺のゲストの人選やアルバムのアイディアはどうやって形にされていったんですか?
ジェフリー:最初は「12弦ギターで12曲のポップ・ソングを弾く」というコンセプトだったんですよ。ところがロバート・ラムから電話があって「一緒に曲を書かないか?」って言ってきたので、で実際に「Mystery Of Moonlight」という次のシカゴのニュー・シングルになる曲を書いたんですね。でこの曲がシカゴのアルバムにも入ったので、「それじゃあ僕のアルバムにも参加してよ」っていうことで、曲を書いてもらうことになって。その時点で、じゃあアンディ・キムにも歌ってもらいたい、マーショル・クレンショウの曲も彼を呼んで一緒に演りたい、というのがあったんで、だったら「じゃあ何とか頑張ってあと9人連れてきて12人にすれば(笑)、1人1曲のゲストになるのでそうしよう!」っていうことになったんですよ。
ーー:元々は「12弦ギターで12曲を」っていうのがあったんですね。
ジェフリー:そう。でもその後に、12人のゲストで12曲をっていう風に変わったんです。
ーー:でもすごいメンバーですよね。
ジェフリー:これは長年演奏する中で培ってきた、友人達ばかりです。唯一ゲストを断られたのは、実はロジャー・マッギンだったんです(笑)。
ーー:断られたんですか!
ジェフリー:何年か前に、他人のアルバムで歌うことはやめるって心に決めたらしいんですよ。だからここでそれを破ってしまうと、また後から色々な人に頼まれるからやらないって言われたんです。でもそれもよくわかるしね。
ーー:では彼を説得するのは、次の楽しみっていうことですね(笑)。その時を楽しみにしてます。
ジェフリー:(笑)そうですね。
ーー:ブライアンやダリアンをはじめ、アソシエイションのラリー・ラモスまで色々な錚々たるメンバーが参加されていて、どの曲もすごく魅力的に聴こえるんですが、この中でジェフリーが特に思い出深い曲がありましたら、その曲のエピソードも交えて教えて頂きたいのですが。
ジェフリー:マーシャル・クレンショウとビル・ロイドが参加の「The Best Thing About Me Is You」が僕は大好きですね。ビル・ロイドと曲を共作しようということで、とりあえず彼から未完成の状態の曲をカセットで送ってもらい、それに自分で手を加えようと思ったんですけど、この曲はその中に完成されたデモで収録されていたんです。で、すごく良かったのでビル・ロイドに「これアルバムに入れるの?」って聞いたら「いや、入れない」とのことで、マーシャル・クレンショウに訊いても「使う予定はない」っていうことでしたので、「だったらもらえないだろうか?」ということでもらった曲なんです。本当に素晴らしい曲なんで、これは彼らからの贈り物だと思っていますよ。
ーー:この曲を使わないなんて、もったいない話ですよね。
ジェフリー:本当に、信じられないよね。だから言ったんだよ!でもマーシャル・クレンショウも、僕のヴァージョンをすごく気に入ってくれたみたいでしたね。ギターは彼が弾いていますし。
ーー:この曲を聴くと、エヴァリー・ブラザーズあたりがお好きなのかな?って感じたんですが。
ジェフリー:もちろん!エヴァリー・ブラザーズとも何年も一緒に演ったことがあるんです。
ーー:それはいつ頃ですか?
ジェフリー:80年代に入ってからですけど。
ーー:ということは、再結成後ですよね。
ジェフリー:そうですね。
ーー:エヴァリーと一緒に演られて、いかがでした?
ジェフリー:すごく優しくて温かい方たちで、僕の子供のミドル・ネームをエヴァリーにしたぐらいです。
ーー:そういうミュージシャン同士の横の繋がりって、今でも活発なんですか?
ジェフリー:やはりビーチ・ボーイズと一緒に活動していたことによって、すごくドアが開かれたと言う感じがしますね。あの時に自分がヒーローと思っていた人たちと実際に会うことが出来て…それはビートルズも含めて…だからやはり今でも電話1本かけて「アルバムに参加してくれない?」って言えるのも、その時のお陰ですよね。あとブライアンと一緒に演るようになって、さらに沢山の人たちが僕に一緒に演って欲しいって声をかけてくれるようになりましたね。僕から言わなくても、向こうから声をかけてくれるのが、嬉しいですね。
ーー:ブライアンとの最初の出会いは、いつ頃でしたか?
ジェフリー:75年ですね。僕がブライアンの家に行って、呼び鈴を押したんです、いきなり(笑)。『ワイルド・ハニー』のジャケットの絵柄のステンドグラスを見つけて、ここがブライアンの家だって分かっていたんで、それで行っていきなり呼び鈴を押して「ファンなんです!」って言ったら「入りたまえ」っていう感じで中に入れてくれたんですよ(笑)。
ーー:その時ジェフリーは、既に音楽活動をされていたんでしたっけ?
ジェフリー:19歳〜20歳ぐらいの頃で、サンタバーバラの大学で色々とカヴァー・バンドを演っていました。ブリティッシュ・インベイジョン系の。
ーー:確か以前日本でリリースされたジェフリーのアルバムのCDのライナーで、その頃ブライアンの家でジャム・セッションをしたということを読んだことがあるんですが。
ジェフリー:そう、その時です。最初に会った時。家中に色々な楽器が置いてあって、ベッド・ルームに行ったらギターとベースがあって「これ、いつも弾いてるベースですか!触ってもいいですか?(笑)」なんていう感じで、それで弾かせてもらってそのままジャム・セッションになってしまいました(笑)。
ーー:ブライアンは、すごく気さくなんですね。
ジェフリー:彼は今でもすごく気さくですよ。僕は一緒に仕事をしているから、実はそれ程のファンじゃないと(周りからは)思われてるかも知れないけど、今の話からしても僕が彼の大ファンだということがよく分かったでしょう?
ーー:はい。僕もその場にいたら、多分ジェフリーと同じことをしていたと思いますよ(笑)。
ジェフリー:そうだよね。
ーー:その後、ビーチ・ボーイズのツアーに参加されるようになったのは、確か81年ぐらいからですよね?
ジェフリー:そうですね。でもその後ブライアン達と特につき合いがあった訳ではなくて、79年にマイク・ラヴと会って彼のエンドレス・サマー・ビーチ・バンドに参加することになったんです。その頃カール・ウィルソンがソロで活動するという話が出てきて、それでマイク・ラヴが僕に(カールの)代役をやってもらえないかっていう話になったんです。
ーー:昨日のライヴでも、ジェフリーはギターのストラップにカールの似顔絵が描かれたバッジを付けていましたよね。
ジェフリー:カールの墓石に刻まれている言葉があるんです。"Carl Wilson The Heart And Voice Of An Angel"って。そこから"Carl Wilson Voice Of An Angel"っていう言葉を、バッジに書いているんです。あれは僕のインスピレーションの源なんです。あのバッジは何種類かあるんですが、僕のギターのストラップには全て付けていますよ。
ーー:昨日、舞台裏でこっそり見させて頂きました(笑)。
ジェフリー:(笑)今度1個お送りしますよ(大笑)。
ーー:そういえば以前ある音楽雑誌を読んでいたときにブライアンのインタビュー記事が載っていて、そこにはブライアンのソロ・ツアーとシンフォニック・ツアーの時に、例えばカールが得意としていたファルセット・コーラスのパートやギター・プレイを、ジェフリーがカールの代わりとして十分すぎるほどカヴァーしてくれていることにとても感謝している、というコメントがあったのですが。
ジェフリー:僕もその記事は読みました。やはりすごく嬉しかったです。実際にそういう言葉が記事となって目の前にあることに、感動を覚えました。僕はカールから全てを学び、カールはブライアンから全てを学んだんだと思います。
ーー:前回のブライアンの来日公演を拝見した時に、曲によってはジェフリーの姿にカールがダブって見えたんですよ。
ジェフリー:ありがとう!
ーー:最近はずっとブライアンのツアーに同行されている訳ですが、そのツアー中のエピソードとか裏話があったら是非教えて頂きたいのですが。
ジェフリー:ちょっと考えさせて。そう、日本公演のリハーサルの時、楽屋にモニターがあるじゃないですか。そこに僕が「God Only Knows」を歌っているシーンが映ったのを見て、声を聴いてブライアンは思わず「カールか?」って言ったことがありました。
ーー:ブライアンも嬉しかったんでしょうね。
ジェフリー:僕も嬉しかったです。
ーー:僕は東京公演した見ていないのですが、大阪公演もすごく盛り上がったそうですね。
ジェフリー:大阪と東京の最終日がすごかったですよ。
ーー:僕は東京の初日だったんですよ。
ジェフリー:そう。でも初日っていうのも、いつもだいたいいい出来なんだよね(笑)。
ーー:ジェフリーから見られたブライアンの魅力って、どんなところですか?
ジェフリー:やはり人間としてもあんなに素晴らしく温かく、優しい人なんていませんから。その上音楽的にもすごく恵まれた才能を発揮していますから、そんな彼と友人でいられることを本当に光栄に思います。
ーー:そういえば昨年来日された際に都内で行われたインストア・イベントの時、ジェフリーはツアーの映像も収録しているのでいずれ発表したいとコメントされていましたが、その後どうなってますか?
ジェフリー:出しますよ。ブライアン・ウィルソンとしてのライヴ映像を5月頃には予定してます。
ーー:それは楽しみですね。

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